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【相続事件簿】母親のお金を使い込んだ兄は逃げ切り!?

2019/02/12


あらゆるパターンの相続トラブルを目撃してきた相続実務士・曽根惠子が、これまであった相続トラブルの実例と、その解決策をご紹介します。

相続されるご家族は多様化しており、離婚や再婚はめずらしいことではなくなりました。
配偶者やこどもがいない方も増えてきましたので、相続のあり方も多様化しています。
ご相談の中でも多いのは、相続になってからごきょうだいでもめてしまい、どうしたらいいかという切実な内容です。きょうだいが絶縁になることも少なくありません。
親の相続は誰しも経験しなければならないこと。
他人事とは言えない事例をご紹介しましょう。

 

母親は倒れて寝たきりの生活に

Mさんの母親は父親が亡くなってからは1人暮しをしてきました。
兄家族は同居するつもりはないようで、嫁いだMさんが定期的に通って母親のサポートをしてきたのです。

母親は70歳のときに脳出血で倒れて、病院に搬送され、緊急手術をしました。
幸いに、発見が早かったことから、一命を取り留めることができましたが、右半身が不自由になり、寝たきりに近い生活となってしまったのです。

母親の状態では、自宅に戻って1人暮しをすることはできません。
そこで、Мさんが介護を担当することになり、母親名義の家は売却して、Мさんの自宅近くの団地に転居してもらいました。
そうしてМさんが介護しやすくなり、母親にはまとまったお金が入り、家賃や介護費用がかかったとしても不安がないようになったのです。

 

母親の預金通帳は兄が管理していた

母親の介護費用は、年金から賄える程度で、家賃の負担も多くはないので、自宅の売却代金や父親から相続していたお金などが減っていくことはないと思えました。
家の売却は主に兄が実務的なことを担当しましたので、そのまま、母親名義の通帳は兄が管理すると言い、Мさんも任せていました。

Mさんはパート勤務でしたので、毎日母親の家に寄って、食事の用意や身の回りの世話をするのが日課となっていました。
兄夫婦はそんなに遠いところに住んでいるわけではないのですが、兄は仕事が忙しいことを理由にほとんど顔を出しません。
まして義姉はまったく協力するつもりもないようで、母親の介護はМさんとヘルパーさんが担当していたといいます。
日常的な年金の振込口座の通帳はМさんが管理し、母親の生活費のやりくりをしていましたが、年金が残らない状況でした。
そうした生活は14年続きました。

 

お前に400万円。自分は600万円。兄はそれで済まそうとした。

母親は84歳で亡くなり、葬儀のあと、母親の部屋で兄からこう切り出されました。
「母親の預金は1000万円しかないので、お前には400万円渡してやる。自分が600万円。それでいいな!」
そして「とりあえず800万円を下して持ってきたので、この部屋の手提げ金庫に入れておくから、半分ずつにする。200万円はあとから下すようにする」とも言いました。

兄のいかにもな発言で、母親のお金で兄からもらうわけではないのに、なにをえらそうなとМさんはカチンときました。
それと1000万円しかないという兄の言葉にひっかかったのです。
母親は自宅を売ったお金が入っていて、4000万円近い預金があると以前に聞いていたのです。

団地の家賃や介護費用は必要でしたが、Мさんが預かっている年金口座でなんとか足りる内容でした。
そして母親はひとりでは動けないため、銀行に出向いて下して使うことは考えられず、兄に預けた預金はそのまま残っているとばかり思っていました。

 

母親のお金が減っている

不審に思ったМさんは兄に問い合わせしましたが、「知らない」「とにかく1000万円しかない」という説明ばかり。
困って私のところに相談に相談に来られたのです。

母親の預金通帳は兄が管理していて見せてくれないということでしたので、Мさん自ら銀行に行って、取り引き明細を取り寄せるようにアドバイスしました。
また、母親の自宅に置いてあるという現金800万円については、無用心でもあり、とりあえずМさんが保管するようにということもアドバイスしました。

すぐにМさんは800万円を保管、銀行にも出向いて取り引き明細の10年分を入手して確認してみました。
すると、母親が倒れたあとにも関わらず、毎年100万円~300万円が引き出されていることが判明したのです。
納得いかないМさんは銀行の払い出し票も入手しました。
半身が不自由となっている母親は思うようらサインができないことが明白。
母親の名前は明らかに兄の筆跡だったのです。

 

とにかく許せない!調停で兄に不正を認めさせたい

母親の財産は基礎控除の範囲内でしたので、相続税の申告は不要です。
遺言書はないので、兄とふたりで財産の分け方を決めて、遺産分割協議をしないといけないのですが、Мさんは兄に預金の使い込みを認めさせて、謝罪をしてもらい、引き出した預金も含めた額で遺産分割協議をしたいと考えました。
しかも、ほとんど介護も協力せず、勝手に預金を引き出してしまうとはあまりに自分勝手です。
ところが、預金の取り引き明細や払い出し伝票の写しを見せても、相変わらず兄は「知らない」の一点張り。
勝手に引き出したことを謝るどころか、認めようともしないのです。

 

もう調停しかない。しかし真実は通らず。兄の逃げ切り。

Мさんに残された選択肢は2つです。
1つ目は、百歩譲って兄の提案どおりの遺産分割をして終わらせてしまう方法です。
理不尽でしかないが、長引かずに遺産分割を終えることができ、兄妹の仲はぎりぎりでも保つことができます。

2つ目は弁護士に依頼して調停に申し立て、引き出された財産も加えた分割をすることです。
こちらは弁護士費用がかかり、時間もかかりますが、自分の主張をすることができ、法定割合の分割が前提となります。

Мさんはお金の問題というよりは、とにかく兄の行動が許しがたいために、真実を明らかにしいたいと弁護士に依頼、調停を始められました。
この時点で弁護士が窓口となり、当社から手は離れました。

 

調停しても何もいいことはなかった。最後は、絶縁状。

2年後、Мさんが報告に来られました。
兄は最後まで認めることはなく、調停でも引き出された3000万円は兄が使ったとはならず、咎めることもなく、終わったと言います。
結果、Мさんは保管した800万円をそのまま相続して決着しました。

しかし、母親が亡くなってからの兄の言動が許せないМさんは、もう兄とは関わりたくないという気持ちとなり、調停を終える条件として「絶縁状」に兄の署名、押印を求めました。
そしてほどなく、今後、Мさんとは関わらないという「絶縁状」が兄の弁護士から送られてきたのです。

調停の結果は兄の1人勝ち。調停しても、裁判しても、真実が通るとは限らず、Мさんはほんとうに疲れたてたと言われました。

 

 

遺産相続評論家・相続実務士のアドバイス

民法の改正で財産の使い込みは見逃せなくなる!いまから、家族でオープンに。

Мさんのように、きょうだいで財産の分け方が決まらず、もめた上に調停した挙句に絶縁となったご家族をたくさん見ています。
いままでは泣き寝入りするしかなかったのが現実ですが、だからこそ、救済措置として相続に関する民法の改正が行われました。

相続前の10年間は、引き出されたり、贈与を受けた財産は相続財産として遺産分割の対象になることが明確になりました。
しかし、亡くなってからではまだ争いの火種になりかねませんので、生前にご家族でコミュニケーションをとり、財産や意思をオープンにして、情報共有したり、役割分担しておくことが必要だと言えます。
家族の相続トラブルを引き起こさないように専門家に相談するところからはじめてはいかがでしょう。

 

コラム執筆

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