事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

夢相続 解決レポート

「15年の時を経て解決した『実家のビル』の相続――10名の親族の想いを一つに繋いだ遺産分割の全記録」

【相談者の事情】

父が亡くなってから15年以上の歳月が経過していました。相続の対象となった実家のビルでは、三男が飲食店を経営しており、店舗を閉業した後は1階・2階をテナントとして賃貸し、法人化して家賃収入を得る形をとっていました。3階から5階にかけては、父と三男家族が居住しておりましたが、その後、父が他界し、さらに今年に入り三男も亡くなりました。現在は三男の妻が一人で居住しています。

長男のY様、次男、長女は既に家を離れて独立しており、この度「そろそろ父の代からの相続手続きを完結させたい」という相談をいただきました。しかし、居住権や感情的な面から三男の妻は手続きに難色を示しており、長年にわたり相続が未完了のまま停滞するという典型的な「争族」の火種を抱えていた状況でした。

 

【資産構成】

相談の主軸となったのは、都下に位置する鉄筋コンクリート造のビル一棟です。この不動産は権利関係が複雑であり、以下の通り所有者が混在していました。

 

  • 建物(12階): 有限会社T社(法人)が所有。
  • 建物(345階): 長男Y様および三男の子、M様で持分を共有。
  • 土地: Y様が単独で所有。


財産が不動産という「分けることが難しい」資産のみであったため、そのままでは相続人全員が納得する形での分割が極めて困難な状況でした。

 

 

【課題の整理】

本件には大きく分けて3つの課題がありました。

  1. 相続人の多さと権利関係の複雑さ: 世代交代が進み、相続人が10名に及んでいました。もともとは5人きょうだいですが、長男、次男、次女の3人が健在。亡長女の代襲相続人3人、亡三男の相続人の配偶者と3人の子ども、4人も相続人となり、合計10人が相続人となります。

  2. さらに、法人名義の建物、個人所有の土地・建物が混在しており、単純な遺産分割協議では解決できませんでした。

  3. 合意形成の難航: 三男の妻が居住しているという現状に対し、どのように公正な分割割合を提示し、納得を得るかが最大の障壁でした。

  4. 煩雑な税務・決済手続き: ビル一棟を売却し、その代金を10名で公平に分配するにあたり、譲渡所得税の計算、法人税の考慮、および売却に伴う諸経費の精算など、専門知識を要する実務が山積していました。また、10名全員が決済に関与するのは非効率であるため、代表者(長男Y様)が一括管理するスキームの構築が必要でした。

  5. 分配は複雑で、分配の計算書を作成することもYさん、Мさんには困難。夢相続で担当しました。相続手続きや売却の費用を計上、会社分を除き、Y様とМ様の譲渡税・住民税をエスクロー口座でプールした残りを決めた配分で計算。決済日に10人の口座に振り込むことができたとY様より報告がありました。

 

【提案(ソリューション)】

夢相続では、以下のステップで解決策を提案しました。

 

  • 合意形成のサポート: 各相続人の心情に配慮しつつ、相続人10名全員が納得できる配分割合を策定しました。法定割合はあるものの、両親と同居し、商売も手伝い、住み続けている三男の妻がいちばん関りがあります。三男が健在であれば相続はできなかったところ、本年、相続人の三男が亡くなったため、三男の妻も相続する権利が出てきたのです。

  • 三男の妻は自分の貢献度が高いという主張。実子のYさんや次男、次女が家を離れているのに、同居し、両親の面倒も看てもらったことは事実ですので、Yさんきょうだいも三男の妻には配慮しようという気持ちでした。

  • 三男の妻からビルを売りたくないという主張もありましたが、それでは分割ができないため、子ども達から説得してもらい、実子よりも多い配分で納得してもらうことができました。

  • その他の相続人は残りを法定割り当てで分割することで合意が得られて、公平な分割協議書を作成し、無事に署名・捺印をいただくことができました。

  • 父親の財産はいったんY様が相続、三男の分はその子、М様が相続し、ビルを売った売買代金で他の相続人に「代償金」を払う内容です。

  • ビルを売却して決めた割合で分配することの合意は得られたので、遺産分割協議書のほかに「土地売却、分配に関する合意書」も作成しています。

  • 円滑な売却スキームの構築: 不動産全体の売却代金1億3,500万円を、権利者である「有限会社T社」「M様」「豊田繁太郎様」の3者へ適切に割り振る計算書を作成しました。

  • エスクロー口座による一括管理: 長男のY様を代表とし、決済代金を一度共同管理口座(エスクロー口座)へ着金させる手法を採用しました。これにより、売買代金から仲介手数料、登記費用、譲渡税、申告費用などを控除した上で、各相続人へ正確に分配する仕組みを構築しました。

 

【解決(成果)】

結果として、以下の通り円満な解決に至りました。

  • 遺産分割の完了: 父の相続、および亡三男の遺産分割についても包括的にまとめ、関係者全員が納得する形で協議書が結ばれました。
  • 公平な利益還元: 不動産売却代金は、配分計算書に基づき、10名の相続人へそれぞれの持ち分比率に応じて正確に送金されました。
  • 税務リスクの回避: 譲渡税や法人税の納税原資、確定申告費用をあらかじめ計算し、プール金として確保した上で分配したため、将来的な納税トラブルを防ぐことができました。

 

【相続実務士の視点】曽根メソッド

今回の事例は、「不動産のみ」という流動性の低い資産を、権利関係が複雑な状況下でいかに公平に分配するかが鍵でした。

私の提案の根幹にあるのは、「数字上の公平性」と「感情的な納得」の融合です。

 

特に、権利者が10名に及ぶ場合、代表者が一人で動くことは合理的ですが、そのプロセスが透明でなければ不信感を生みます。

今回、売却から納税、最終分配に至るまでの全プロセスを「配分計算書」として可視化し、各人が「なぜこの金額になるのか」を納得できる根拠資料を作成して見える化しています。

 

Y様は「長年の家族の懸念事項が解決出来て本当によかった」と胸をなでおろしておられました。一歩間違うと争いとなり、弁護士、調停となりかねませんが、スムーズに進めることができて長男の責任が果たせたと安堵されていました。

 

父親の相続税の申告、納税は時効で相続税を払う術はありません。亡三男の財産の基礎控除内で申告、納税は不要。残るは来年の譲渡税の確定申告と納税ですので、ほんとうにひと段落したと言えます。

 

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■執筆者

相続実務士 (株)夢相続 代表取締役  曽根恵子

【相続実務士】の創始者として1万15000件の相続相談に対処。
夢相続を運営し、感情面・経済面に配慮した”オーダーメード相続”を提案。
”相続プラン”によって「家族の絆が深まる相続の実現」をサポートしている。

  • 相続関連著書・監修:92冊、累計88万部テレビ・ラジオ出演:300回超
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