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相続実務士実例Report

【保存版】資産と家族を守る「相続設計」と「費用の前払い」という新常識 5回シリーズ3回目(生前)  税務署は見逃さない!「名義預金」という落とし穴

■その「母の預金」、本当にお母さんのものですか?

前回は、Fさんのご自宅にある600坪の土地評価を専門的な視点で見直すことで、評価額が「2億円から1億円」へと劇的に下がったプロセスをお伝えしました。

土地の目途が立ち、ホッと一安心したのも束の間。相続設計を進める中で、次なる大きな課題が浮き彫りになりました。それは母親の「預金」の出どころです。

Fさんから追加でご相談いただいた内容は、以下のようなものでした。

「母親の口座に約4,400万円の預金があります。母親は長年専業主婦でしたので、おそらく父が移したものだと思うのですが……。これに加えて、自宅に1,200万円ほどの現金もあり、父と母どちらのものか判然としません。これらも父の相続財産として申告しなければならないのでしょうか?」

実は、この「家族名義の口座にある、被相続人(亡くなった方)の資金」こそが、税務調査で最も厳しくチェックされる「名義預金」なのです。

 

税務署が「専業主婦の4,400万円」を疑う理由

相続税の申告において、税務署は「亡くなった方の名義の口座」だけを見ているわけではありません。配偶者や子供、孫名義の口座についても、その原資がどこから出ているかを徹底的に調べます。

 

Fさんのお母様の場合、以下の状況がありました。

  • 預金総額:約4,443万円(普通預金 4,330万円、定期預金 112万円)
  • 収入背景:長年の専業主婦であり、主な収入は年金のみ。

 

税務署の視点に立てば、「自身の収入だけで4,000万円以上の資産を築くのは難しいはず」と判断されます。つまり、父親の給与や資産をお母様の口座に移しただけで、実質的な管理は父親が行っていた、あるいは贈与の手続きが不十分であったとみなされれば、それは「お父様の財産」として課税対象になってしまうのです。

さらに、自宅にあった1,200万円の現金についても同様です。誰の所有か不明確な「タンス預金」は、一家の稼ぎ手であったお父様の財産と推定されるのが一般的です。。

 

夢相続の分析:名義預金を「見える化」する

夢相続では、Fさんと共に母親の預金の内訳を精査しました。合わせて相続税の申告を視野に入れて、税理士とも共有して、いまから相続になったらどの程度申告するかの方針を明確にするように精査し、検討をしました。

まず、母親自身の固有の財産(受け取ってきた年金の蓄積など)を算出し、それ以外の部分を「名義預金(父親からの預け金)」として、あらかじめ相続財産に計上するのが無難という結論になりました。

 

F家の両親の預貯金・現金の内訳

  • 父名義:定期 1億7,000万円
  • 母名義:普通 4300万円
  • 手元現金 1200万円

 

  •  のうち名義預金分:約1,968万円(年金収入等を除いた、父原資と推定される額)
  • 手元現金:1,200万円

 

名義預金はどうする?税理士の見解

税理士は、母親の収入は「年金」ですので、それをベースに考えるとしてそれ以上が父親からの名義預金とするのが無難という見解でした。結果、母親名義の預金は4443万円ですが、父親からの預り金が1968万円とし、相続になった時には加算して申告をするということになりました。

 

Fさんの父親は以前の土地売却の代金をそのまま預金で保有しておられるので税務調査の対象になりやすいと判断されます。母親名義だからと言って考慮しないで父親の相続の申告をしてしまうと、後から税務調査で「指摘」を受けかねません。そうなると追徴課税というペナルティが発生します。だからこそ、生前のうちに「これは名義預金として計上する」と決めておく「正直な相続設計」が、結果として家族を守ることになるのです。

 

「名義預金」を回避するための3つのチェックポイント

皆様のご家庭でも、以下の点を確認してみてください。

  1. 原資は誰か?:そのお金を稼いだのは誰か。
  2. 管理・運用は誰か?:通帳、印鑑、カードを誰が持っているか。
  3. 贈与の認識はあるか?:あげる側・もらう側の双方が「贈与」に合意し、契約書があるか。

 

もし、父親が母親名義の口座を作り、通帳、印鑑を管理して自分のお金を移していたのであれば、それは母親名義の口座を「借りているだけ」の状態です。Fさんのケースでは、父親がまだ意思疎通ができるうちに、これらの実態を整理し、名義預金分を含めた正確な財産額を把握することに注力しました。

Fさんは、「名義預金のことまで事前に整理できたことで、税務署が来たらどうしようという不安が消えました」と安堵されていました。

 

結びに:見えない財産こそ、生前に光を当てる

「家族だから、口座を分けていても大丈夫だろう」という思い込みが、後の大きなトラブルを招きます。名義預金は、悪意がなくても「申告漏れ」として扱われてしまう、非常に怖い存在です。

 

相続設計とは、目に見える不動産だけでなく、こうした**「名義のねじれ」を正していく作業**でもあります。

次回は、いよいよ具体的な「資産の組み替え」と「納税資金の確保」について、Fさんがどのようにして土地を守り抜いたのかを詳しく解説します。

 

【今回の重要ポイント】

  • 名義預金は税務調査の標的:専業主婦や子供の名義でも、原資が被相続人なら課税対象。
  • 「預け金」としての計上:実態に合わせて正しく申告に含めることが、最大の防御。
  • 配偶者控除の戦略的活用:名義預金を認めた上で、配偶者が相続することで納税額を賢くコントロールする。

 

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■執筆者

相続実務士 (株)夢相続 代表取締役  曽根恵子

【相続実務士】の創始者として1万15000件の相続相談に対処。
夢相続を運営し、感情面・経済面に配慮した”オーダーメード相続”を提案。
”相続プラン”によって「家族の絆が深まる相続の実現」をサポートしている。

  • 相続関連著書・監修:92冊、累計88万部テレビ・ラジオ出演:300回超
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