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相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
【実例】身元引受人なし・遺言なし・財産不明」――いとこ相続で起きた“静かな混乱”

■子どもがいない高齢者の相続
相続の現場で、ここ数年、確実に増えているケースがあります。それは「子どもがいない高齢者の相続」です。そして、その中でも特に難しいのが、配偶者もすでに亡くなり、相続人が“いとこ”になるケースです。
今回、ご相談に来られたのはМさんご夫婦(60代)。15年前にМさんの父親が亡くなった時にサポートしています。今回は奥さんの叔母さんが亡くなったと言います。
■突然の連絡は「死亡後」
奥さんの叔母さんは母親の妹で、80代後半で亡くなりました。配偶者は先に亡くなっていて、子どもがいないため、きょうだいが相続人になりますが、すでにみな、亡くなっていて、甥姪が相続人になります。つまり、相続人は「いとこ」8名。
亡くなった叔母は自分のきょうだいとは疎遠になっていて、Мさんの妻もその叔母とは10年前に会ったきりだったのです。
叔母は数年前から老人ホームに入所しており、ホームの手配など身の回りのことは夫側の親族がしてくれていたといいます。
問題はここからです。
夫の親族ですので叔母の親族ではないため、亡くなった時には身元引受人がいない状況でした。そのため、亡くなった際の対応はすべて自治体と施設が行い、
・遺体の保管 ・火葬の手配 ・遺品整理 までが進んだあとで、親族へ連絡が入ったのです。
相続人は叔母のきょうだいなのですが、Мさんたちには連絡がなく、「相続が始まったことを知らされたのは、すべて終わった後」という状態でした。
■財産がまったく分からない
さらに問題を深刻にしたのが、財産の中身が誰にも分からないという点です。
・自宅はすでに売却済みの可能性が高い
・金融資産(預金・株式)はあるはず
・配偶者の財産はすべてこの方が相続している
つまり、「それなりの資産がある可能性が高い」
にもかかわらず、
・通帳がどこにあるか不明
・証券口座の有無も不明
・遺言書の有無も不明
という、まさに“手がかりゼロ”の状態でした。
■相続人同士の意見がバラバラ
相続人は8人。しかも全員がいとこ同士で、普段の交流はほとんどありません。
このような関係性になると、必ず起きるのが「判断のバラつき」です。
実際に出てきた意見は、
・「もう関わりたくないから相続放棄したい」
・「借金が怖いから限定承認にしたい」
・「よく分からないから様子を見たい」
さらに追い打ちをかけるように、相続人ではない叔母の夫側の親族から“財産の半分を要求”されるという事態も発生しました。
■なぜこんな混乱が起きるのか?
このケースの問題点は、はっきりしています。
それは次の3つです。
① 遺言書がない(または未確認)
② 財産の見える化がされていない
③ 身元引受・管理体制がない
この3つが揃うと、相続は一気に“トラブル化”します。
特に今回のように、・子どもがいない・配偶者もいない ・親族が遠い
というケースでは、「誰が責任を持つのか」が曖昧になるため、
手続きが止まりやすくなります。
■見落とされがちな“3ヶ月の期限”
もう一つ重要なのが、相続の「期限」です。
相続には、
「相続放棄」や「限定承認」を選ぶ期限が3ヶ月
というルールがあります。
しかし今回のように、・財産が不明 ・資料が手元にない ・関係者が多い
という状況では、3ヶ月では判断できないのが実情です。
その結果、・とりあえず放棄する ・何もできずに単純承認になる といった“消極的な判断”になりがちです。
■実務としての正しい進め方
では、このようなケースではどう動くべきか。ポイントはシンプルです。
① 遺言書の有無を最優先で確認
公証役場で照会すれば、公正証書遺言の有無は確認できます。
遺言があるかどうかで、その後の流れは大きく変わります。
② 財産の手がかりを回収
今回は自治体が遺品を管理している可能性がありました。
・通帳 ・郵便物 ・証券会社の通知
これらを回収することで、財産の全体像が見えてきます。
③ 判断期限の延長も視野に入れる
どうしても間に合わない場合は、家庭裁判所に「期間伸長」を申し立てる
という方法があります。これは意外と知られていませんが、実務ではよく使われる方法をなのです。
④ 相続方針を早期に一本化
・放棄する人 ・残る人 を明確にし、残った相続人で「限定承認」または「分割協議」に進みます。
■「半分ください」は通用しない
今回のように、相続人以外から財産請求が来るケースも増えています。
しかし結論から言うと、相続人でない人に財産を分けることはできません。
もし渡す場合は「贈与」となり、・年間110万円を超えると課税 ・高額になると税率は最大50%という現実があります。
つまり、安易に応じると“税金トラブル”が発生するのです。
■実は「プラス相続」の可能性が高い
今回のケースを冷静に分析すると、
・不動産はすでに売却済み
・高齢で新規借入の可能性は低い
・株式投資をしていた可能性あり
という状況から、負債リスクは低く、資産は残っている可能性が高い
と考えられます。しかし、それでも判断できないのは「見えていないから」です。
■この問題は他人事ではない
この事例は決して特別なものではありません。むしろ今後、確実に増えていきます。
・おひとりさま高齢者 ・子どものいない夫婦 ・疎遠な親族関係
この3つが重なると、誰の身にも起こり得る相続になります。
■だからこそ必要なのは「設計」
今回の混乱は、すべて事前に防げたものです。もし、
・財産一覧が整理されていたら
・遺言書があったら
・身元引受や管理体制があったら
相続はここまで混乱しません。
つまり必要なのは、「相続対策」ではなく「相続設計」です。
■まとめ
今回の事例から見えてくる本質は、次の通りです。
・相続は「準備していない人ほど難しくなる」
・情報がない相続は、判断ができない
・関係者が遠いほど、トラブルが起きやすい
そして何より、相続は“起きてから考えるものではない”ということです。
もし今、
・自分の財産が整理されていない
・誰に何を渡すか決めていない
・家族が手続きできる状態にない
このいずれかに当てはまるなら、それはすでに「リスク」です。
相続を「争い」にするか、それとも「安心」に変えるか。
その分かれ道は生前の設計にかかっています。
Мさんご夫婦には、遺骨や遺品を預り、財産のてがかりを探してみるようにアドバイスしました。そしてや遺言書があるか、公証役場で確認するようにともアドバイスしました。
Мさんご夫婦は、今後の行動のイメージができたと喜んでおられました。疎遠になっていた叔母なので財産などまったくわからないので、どうしていいか、わからず、困っていたので、少しほっとできたということです。
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■執筆者
相続実務士 (株)夢相続 代表取締役 曽根恵子
【相続実務士】の創始者として1万15000件の相続相談に対処。
夢相続を運営し、感情面・経済面に配慮した”オーダーメード相続”を提案。
”相続プラン”によって「家族の絆が深まる相続の実現」をサポートしている。
- 相続関連著書・監修:92冊、累計88万部テレビ・ラジオ出演:300回超
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