事例

相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

アメリカ在住、70代女性。ご主人が亡くなり、子どもがいない。これから終活。

 

■70代のおひとりさま。子どもがいないのでこれから終活

Sさんは70代の女性。妹さんから紹介されたと言ってお電話で相談がありました。

Sさんは現在、アメリカのバージニア州にお住まい。アメリカ人と結婚されたので永住権もあります。20代で単身、アメリカに渡り、日本企業のアメリカ支社に定年まで勤務されていました。その後もその会社で仕事を続けて、5年前に70歳でリタイヤしたといいます。ご主人は11年前に亡くなり、お子さんに恵まれなかったため、Sさんは現在一人暮らし。相続人のきょうだいやおい、めいは皆、日本在住です。

 

■日本の相続手続きが必要。解説とケーススタディの本はわかりやすい

Sさんの相続人が日本に住むきょうだいやおい、めいで7名ということで、アメリカだけでなく、日本でも相続手続きが必要となります。

妹さんが本を探して「いちばんわかりやすい相続・贈与の本」を購入し、Sさんに送って読んで頂いたということでした。

Sさんは電話で「とてもわかりやすかった」と言っておられましたが、自分の場合はどうすればいい?というのが、ご相談の内容でした。

「いちばんわかりやすい相続・贈与の本」は平成20年から出版している本で、毎年、年度版として出していますので、この本だけでも累計15万部ほど出版されているロングセラー。解説のあとに実例をもとにした52のケーススタディを紹介しているので、身近でわかりやすい内容になっています。

 

■これからの終活はどうする?アメリカ~日本

Sさんの財産は自宅と金融資産ですが、メールでリストアップされた財産内容を送ってもらいましたところ、600万$ほどもあります。かなりの資産を残しておられますが、40年以上も会社勤めをしてきたことやご主人の財産も引き継いだからだということです。

Sさんが考える終活準備は、アメリカで「取り消し可能な生活信託」を作成することで、取り扱いを容易にするために、上記の資産を死亡時に清算し、受益者に分配することを計画しているといいます。

けれども、アメリカの財産に関する税金や相続税控除(基礎控除)と相続税がどのように適用されるかなどがよくわからないと。

 

 

■アメリカの相続税の基礎控除は1140万$

アメリカの相続税は「Estate Tax」といい、日本語にすると「遺産税」と訳されます。

日本の相続税は税務署に対して申告・納付する国税ですが、アメリカの遺産税は、国税に相当する「連邦遺産税」と地方税に相当する「州遺産税」とがあります。

アメリカの連邦遺産税の基礎控除は、1,140万ドルとなっています。これは、現在のレート150円として日本円に換算すると約17億円となり、遺産の額がこの金額に満たない場合には、遺産税は発生しません。基礎控除を超えた額に対する連邦遺産税の税率は18~40%です。

 

■日本の相続税の基礎控除は3000万円+600万円×相続人の数

けれども、日本の相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。Sさんの場合、相続人7人ですので、7200万円ですが、それを超えた財産については10%~55%の相続税が課税されますので、相続税の負担は必須になります。

仮に600万$=9億円の財産だと想定した場合の相続税は2億円1200万円程となります。

日本の相続税の負担がいかに大きいかということになります。

 

■日本の相続税の計算の仕方

相続税の計算の仕方は下記の順番となります。

 相続税の算出は、①課税価格の計算、②課税対象の遺産総額の計算、③相続人全員の相続税額の計算、④各相続人の相続税を按分計算をする、⑤各相続人の加算額を考慮し、控除額を引くという5つのステップで計算します。

 

1)すべての財産から「課税価格」を計算する

①相続(遺贈)財産+②みなし取得財産-③非課税財産-④債務控除+⑤相続開始前3年以内の贈与財産により課税価格を算出します。相続前3年以内の贈与も加えます。

 

2)課税対象となる「課税遺産総額」を計算する

 課税価格から相続税の「基礎控除額」を引いたものが「課税遺産総額」となります。

「基礎控除額」とは、いわゆる課税最低限のことで、課税価格の合計額(遺産総額)のうち、これを超える部分に相続税が課税されます。

※課税価格の合計額が基礎控除以下であれば、相続税は一切かからず、申告も不要

相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人数。

3)相続人全員の相続税総額を算出する

 「課税遺産総額」を法定相続分で割り、「相続税の速算表」で対応する税率をかけて控除額を差し引きます。相続人の全員分を合計して、「相続税の総額」を出します。

 

4)各人の実際の相続税額を按分計算する

 相続税の総額を各人の実際の取得割合に応じて按分し、各人の按分割合を出し、相続税の総額に掛けて、とひとりひとりの算出税額を出します。(按分割合は少数第2位まで)財産を2分の1相続すれば相続税も2分の1、4分の1であれば相続税も4分の1です。図29〔各人の相続税額の計算〕

 

5)相続税の2割加算と税額控除をする

 被相続人の孫や兄妹姉妹は、算出税額に2割を加算します。代襲相続人となる孫は2割加算は適用されません。

 相続税から差し引ける項目は、税額控除は6種類あります。最も節税効果が大きいのは、配偶者税額控除で、取得した財産の課税価格が法定相続分以下あるいは1億6000万円以下なら相続税はかかりません。

 

◇600万$の相続税・・・212,198,000円

600万$の日本での相続税の計算は下記のようになります。

6,000,000$×150円=900,000,000円

900,000,000円-基礎控除72,000,000円=828,000,000円÷7人=

118,285,000円・・・1人分 税率40%

118,285,000円×0.4-17,000,000円30,314,000円×7人=

212,198,000円

・・・1人分 税率40%

 

■これからの終活はどうする?

Sさんは日本人ですが、メールのやり取りも英語の方が楽ということで、これからも日本に帰る選択肢はないといいます。よって相続は、いったんはアメリカで手続きをします。

現在の財産では、アメリカの相続税は課税されないと思われますが、日本の相続人が引き継ぐときの相続税の負担が少なくありません。Sさんや相続人のごきょうだいやおい、めいにとっては残した財産の中で相続税も払えるので問題はないとも言えますが、それでも残した財産の40%の相続税が課税されることは大きな負担と言えます。

 

■相続税の節税プラン

Sさんはご自宅もあり、今後の大きな出費はないように思われます。しかし、それでは相続税も減らせないため、相続の手続きや納税などの手続きを整理して、事前にシュミレーションしておけるような相続プランのご提案をするとアドバイスをしています。

それにはSさんのアメリカでの財産の管理や相続手続きを依頼する人を決めて、方向性が出た時に、日本の相続手続きや納税をどうするかの方向性が出せますので、節税対策も含めた相続プランの提案を予定しています。

Sさんとはオンラインや電話でミーティングをして、今後の不安が減らせるようなご提案とサポートをしていく予定です。

 

 

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