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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

借地権の理不尽。結局、売れない、自由にならない。地主には勝てない?

◆先々代から借地

Nさん(60代・男性)の実家は、戦前より曾祖父が近隣の地主より土地を借りて、自宅を建てて住んできました。祖父が相続したあと、昭和45年に建て替えており、Nさんが生まれ育った家となりました。祖父母が亡くなり、同居してきた父親がずっと地代を払って借地契約を更新してきました。

 

父親が亡くなった後、母親がひとり暮らしをしてきましたが、その母親も5年前に亡くなりました。25坪ほどの借地で広くはないため、Nさんは結婚を機に、実家を離れて生活し、自分で家を購入しました。姉も嫁いで、夫名義の家に住んでいます。

 

◆実家を処分したい

Nさんは母親が亡くなった時に相続の手続きをしたいと相談に来られています。空き家になった実家は長男のNさんが相続し、母親の預金は姉と二人で分けました。借地権が60%のエリアで評価は2000万円、預金は1000万円でしたので、相続税の申告は不要でした。当社では遺産分割協議書の作成をサポートし、建物の名義替えの手配をするなどもお手伝いをしています。

 

そのときも実家に戻って住まないのであれば、早めに処分をすることをご提案していましたが、3回忌を過ぎたら、という時期もすぎ、ようやく決断をされたのでした。

 

その間も毎月3万円の地代と建物の固定資産税、光熱費も合わせると、Nさんは年間40万円以上の負担をしてきたといいます。

 

 

◆地主の承諾が不可避

借地契約の場合、20年ごとに更新が必要であり、更新料も請求されます。また、建て替えや借地権を譲渡する場合も地主の承諾が必要で、承諾料も支払わなければなりません。

 

Nさんは以前より、そうした知識はあり、地代を払う際に地主に借地権譲渡について打診をしてみたといいます。

 

すると地主は「Nさん家族が住むために土地を貸してきたので、他人に売ることは認めない」という回答をされたというのです。それで困ったと相談に来られたのでした。

 

◆借地権は売れない?

借地権は底地よりも権利が大きく、財産ではあります。しかし、借地人が住むための権利であり、自由に売却することができないことは大きな足かせになります。

 

借地権者が建物を建て直すのであれば地主の承諾を得て進めることができ、仮に賃借人が住まなくても賃貸用の建物にするケースは多くあります。

 

Nさんの場合に自分が住むわけではないため、借地権を処分して、あらたな借地権者が建て直して住むことになります。しかし、一般の方は借地権の扱いに慣れていないため、売却先は不動産会社が一般的で、その後、建て直して一般の方に販売するとなりますが、この方法だと地主は承諾をしない選択肢もあります。

 

◆家庭裁判所に申し立てもできるが

借地権の譲渡を地主が承諾をしない場合、家庭裁判所に「賃借権譲渡許可」の申立てをすることもできます。当社で業務提携先の弁護士法人2社に見解を求めてみましたところ、弁護士の判断は、Nさん自身が建て替えて住むわけではないことから、建て替え、転売となると許可されない可能性の方が高いという結論でした。

 

そこで、Nさんと相談し、地主に底地を買い戻してもらうことが無難だとなり、売買契約が設立したのでした。

 

◆理不尽さが残る

地主が建て替え、転売を承諾してくれるとすると、少なくとも相続の借地権評価、あるいはそれ以上の価格となり、2000万円で買う不動産会社は複数ありました。しかし、建売住宅としての販売を承諾してもらえないリスクがあると買う会社はありません。

 

結果、相続評価の半額でしか契約は成立しなかったのです。しかも、地主からは建物は解体して更地で返してもらいたいということが条件でしたので、手取りは借地権評価の7割程度となりました。

 

長年、地代を払ってきたのに何も残らないに等しく、借地権は住んでいる間はいいが、他には価値を生まない、残せない財産だとなりました。

 

Nさんは、それでも地代の支払いが無くなり、すっきりしたとほっとされていましたが、借地権の理不尽さを痛感した事例となりました。

 

 

◆相続実務士のアドバイス

●できる対策 

建物を建て替えるときに、借地の面積を減らしても地主と等価交換して所有権にしておく

住まない場合は賃貸用建物とし、常に居住者がいる状態にする

 

●注意ポイント

空き家になると住む名目がないとなり、借地人は不利になるため、要注意。

土地の面積がある場合は、地主と等価交換し、所有権にしておかないと財産の価値が守れないと言えます。

 

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