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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

公正証書遺言は意思確認ができるように準備。本人の言葉を大切に作れる。

◆80代の母親に遺言書を作成してもらいたい

Hさん姉妹は母親名義の自宅の敷地内に自宅を建てて住んでいます。父親が亡くなった時には、遺言書があり、そのとおりに手続きをすることができて、とてもスムーズだったと言います。そんな経験があるため、母親にもそろそろ遺言書を作成してもらいたいので、サポートをお願いしますと依頼がありました。父親の公正証書遺言の作成も夢相続でお手伝いをした経緯があります。

 

◆父親の公正証書遺言は家族で情報共有して作成

Hさんの父親は70歳になったことをきっかけとして、遺言書を作っておきたいと決断をされました。父親だけでなく、母親とHさんと妹の4人で相談に来られて、皆が納得でき、不安のない内容になるよう、情報共有しながら進めることができましたので、とても円満に勧められたと言えます。

これを父親だけが自分で決めて作ってしまうこともできますが、それでは、知らなかったと不信感が出たり、分け方が公平でないと不満が残ったりしなくもありません。

だからこそ、事情が許せば、家族全員にオープンにしておくことをお勧めしています。

 

◆母親が自分で言いやすい言葉を遺言書にする

父親は70歳で遺言書を作り、10年後の80歳で亡くなりました。母親はそれからさらに数年たち、90歳目前。遺言書がなくても問題がないのではという思いもあり、なかなか決断できなかったといいますが、今年になり、骨折して入院することがあり、いよいよ、今の時期に作っておいたほうがいいとなりました。母親が自ら言い出したことなので、財産の分け方の意思も明確ではあるのですが、それを自分で形にすることは簡単ではありません。

そこでHさん姉妹がサポートし、自筆で書くのは大変ですので、公正証書がよいとなったのです。

 

◆公証役場に出向くのが大変

Hさんの母親の住まいは関東近県の郊外ですので、最寄りの公証役場までは車で1時間以上もかかります。父親は70歳のときで元気でしたので、電車で公証役場まで行けたのですが、母親は自力で電車に乗ったりすることが困難だといいます。

そうした場合は公証人と証人がご自宅やホームに出張することができます。出張費はかかりますが、自分の部屋で遺言書が作れるので移動に苦労しなくてもよい安心感があります。

Hさんは母親とも相談に、出張でお願いしたいということでした。

 

◆内容も母親の言葉で。わかりやすい表現で作れる

不動産は自宅とHさんの家、貸店舗、駐車場などで、普段から家族で〇○○の土地という呼び方をしています。公証人に相談すると母親が使っている表現で記載し、詳細は別紙にすればいいという提案を頂きました。

そうしたことから、普段の呼び方で不動産の渡し方を話しできたことで、公証人も母親の意思確認ができたいと判断し、公正証書遺言は無事に出来上がりました。

今回のHさんの母親のように、本人の言いやすい表現で公正証書遺言が作れることで。堅い表現ではなく、柔軟に対応してもらえることがわかりました。

公証人も、証人の夢相続もいろいろと段取りをしたお陰で、スムーズに遺言書が作成でき、安堵した次第です。

 

◆遺言書の内容

令和5年第     号

遺言公正証書

 本公証人は、遺言者〇〇〇〇の嘱託により、証人○○○○及び○○○○の立会の下、遺言者の口述を筆記して、この証書を作成する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する下記財産を、遺言者の長男○○○○(昭和〇〇年〇月〇日生、以下「〇〇」という。)に相続させる。

  • ○○が住んでいる○○○○の家の建物とその土地

(詳細は、別紙第1記載のとおり)

  • ○○○○の土地

     (詳細は、別紙第2記載のとおり)

第2条 遺言者は、遺言者の有する下記財産を、遺言者の長女○○○○(昭和○○年〇月〇日生、以下「○○」という)に相続させる。

  • 遺言者が住んでいる○○の家の土地と建物

(詳細は、別紙第3記載のとおり)

  • ○○土地と建物

  (詳細は、別紙第4記載のとおり)

 (3)第1条(1)の土地の5分の2

第3条 遺言者は、遺言者の有する預貯金等金融資産及び前条記載の財産以外のその他の一切の財産を○○に相続させる。

第4条 遺言者は、遺言者の負担する未払いの医療費、税金、その他一切の債務を○○に承継させる。

第5条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として○○を指定する。

2 遺言執行者は、この遺言に基づく不動産に関する登記手続並びに預貯金等の金融資産の名義変更、解約、払戻し、その他この遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する。

3 遺言執行者は、その事務を第三者に委任することができる。

                    以上                                    

本旨外要件

住所 ○○県○○市○○〇丁目〇番地〇

  無職

遺言者  〇○○○○  昭和〇○年〇月〇日生

上記本人は、印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを証明させた。

 

東京都中央区八丁堀4-11-4八丁堀フロント5階 株式会社夢相続

  会社員

  証 人       ○○○○       昭和〇○年〇月〇日生

 

東京都中央区八丁堀4-11-4八丁堀フロント5階 株式会社夢相続

  会社員

  証 人       ○○○○       昭和〇○年〇月〇日生

 

以上のとおり遺言者及び証人に読み聞かせ、かつ閲覧させたところ、全員がその筆記の正確なことを承認し、次に署名押印する。    

 

 遺言者 ○○○○

  証 人 ○○○○

  証 人 ○○○○

 

別紙 土地、建物の記載

 

上記各持分の表記は、いずれも、遺言作成時の遺言者の持分割合であり、遺言の効力発生時点で、持分割合に変動が生じている場合は、その時点での遺言者の有する持分の全てとの趣旨である。

 

◆遺言書で意思を残すことで争いは防げる

○遺言がないと相続人は迷い、争う・・・意思を残すことの大切さ

 私が相続コーディネートをはじめた頃は、相続税の節税を第一の目的とした業務に取り組んでいました。そうしたご家庭は「節税」という大きな目的があり、揉める余地がなかったのかもしれません。またバブル経済の余波があり、財産の価値も違っていたこともあったかもしれません。

 ところが、相談の数が増えるにつれて、いままでとは違うことにも気がつき始めました。それは、「節税」というよりも、それ以前に「遺産分割」を話し合う段階で、すでにうまくいかなくなる方があまりに多い現実があるということです。

 毎日、遺産分割の相談に対処しているときなど、揉めるご家庭に共通することは何か?というテーマをずっと考えてきました。そして、そのうちに、私の中で確信となってきたことは、「揉めるご家庭は、亡くなった人の意思が見えないから」だということでした。これは、本当に数多くの相続の相談を受けてきた経験から実感として感じられる事実です。

 亡くなった人の「意思が見える」ときには、残された意思によって家族は争うこともなく、まとまっていくようになります。仮に多少の不協和音があったとしても、「亡くなった人の意思」が配慮のある内容で残されているのであれば、その意思は動かし難い最高の説得力となり、余計な争いには発展しないと言えます。

 だからこそ、生きてきた証や心や財産を伝えることは必要で、残された家族にとってはそれからを生きる力にもなります。その後の相続人の運命を左右することもあるでしょう。

相続人の方たちの様子からは、亡くなった人の人生や人柄が、手に取るように見えてしまうことがあります。互いを配慮しながら円満に進められるご家庭もあれば、財産の分け方でもめてしまうご家庭もあります。それがそのまま亡くなった方の一生分のこだわりから発しているのだと受け止めています。

 こうした現実を見ると、形のある不動産や動産という物を残すことはもちろん大切ですが、それよりも、「価値ある相続を用意する」ことの方が大事だと、痛感させられます。残された相続人の為にも、「何を残せるのか」、あるいは「何を残してはいけないのか」を整理し、考えてみることで、「相続を用意すること」が大切になるでしょう。

 相続税という経済的なダメージも大変ですが、親族間の遺産争いや感情的なしこりは金銭に換えがたいダメージとして残ることさえあります。相続によって失う物は財産だけではないのです。

 

○誰でも本音は争いたくない・・・オープンにしてもらえば譲ってもいい

 相続を円満に乗り切るには、家族で争わないことが大前提です。相続する立場では、「相続のしこりを残さない解決が大事、オープンな相続にする」ことが大事です。現在でも、まだ家督相続を踏襲するご家庭が多くあります。家を継ぐ相続人の考えで、家を出た人や嫁いだ人には財産を分ける必要はない、教える必要もないということさえあります。

 多くの方は、隠したりせずに話し合いができるのであれば、譲歩してもいいというのが本音です。たいていの方は、「きょうだいと争いたくない」「相続はなるべく円満に済ませたい」という気持ちなのです。最初は、ほとんどの方がこうした気持ちだと言えます。

 ところが、「争いたくない」「円満に」と思っていても、それを度外視たくなる出来事が起こるわけです。

 はじめは、「遺言の存在を教えてもらえなかった」ということが、ひっかかります。

亡くなった本人からも、それを知っていたきょうだいからも、一言もなかったことは、大きなダメージとなります。

 次に、「財産の内容が偏っていること」。同居や寄与などがある相続人には多く、ということに不満はないものの、あまりに偏っているのは、不審感になります。その上、遺言の中に自分の記載がない場合は、「子供として存在を否定された」ように感じます。

 さらに、「財産の内容を教えてもらえない」となると、不審感、不満を押さえることができず、最初の「譲ってもいい」気持ちは飛んでしまい、「相手がそんな態度なら、徹底的に追求して自分の権利分はもらう」という気持ちに変わってしまいます。

 このように、遺言の存在や財産を隠されるので疑心暗鬼が生まれるのです。何事も隠さず、オープンにしないと疑心暗鬼を引き出し、一生悔いが残りますので、できるだけ悔いを残さない解決をしておくことが大切です。

 相続させる立場では、相続の用意をすることは権利であり、義務でもあるということです。円満に相続を終えられるご家庭では、生前から話し合いをされていたり、配慮された遺言によって意思が見えるため、争う余地はありません。

 遺言を作る方にお勧めしていることは、「遺言を作ることや内容を相続人にも知らせてオープンにしておくこと」です。それができないときは付言事項を活かして真意を残して頂くようにします。ご本人の意思が最良の説得材料となりますので、自分の相続の価値や家族を守るためにも遺言は用意された方がいいでしょう。

 

○「もめない相続」を残すことも財産・・・本人の意思で実現できる

 次の世代に継承してもらうための分け方を指定しておくことは大切です。意思表示もなく、あとの者がなんとかするだろうというのでは、うまくいくはずがありません。よってまずは、自分の財産の分け方は、このように分けたいと明確に決めることが大切です。決めたあとは意思を伝えておかなければ、残された人に迷いや欲を持たせるものです。

 財産分与の具体的な方法を決めていないばかりに形として残った不動産や動産を巡り親族がもめるとすれば、相続の価値は半減することになりかねません。だからこそ、相続人が迷わず、争わないための羅針盤になる「遺言書」を作成し、自分の意思を明確にして残しておくことが必要で、それが最良の説得材料になります。

 自筆で書く方法もありますが、自筆の場合は、偽造の疑いを持たれたり、内容に不備があると無効になりますので、必ず効力があるとは言えません。そうした不安がなく、確実に内容を実現するには、「公正証書遺言」にしておくことをお勧めします。

 次に、遺言執行者を決めておくことも必要です。相続の手続きは相続人全員で進めますが、窓口となる代表者は1人の方が何事もスムーズにいきます。よって、その代表者を選任しておくことも大切です。

 遺言書は具体的な財産分与だけでなく、感謝や気持ちを綴ることもできます。残された人達を思いやる愛情にあふれたものであれば、感情的な部分で救われ、生きる勇気を与えられるはずです。意思を残すことで、家族に有形、無形の財産を残せば、相続の価値があるといえます。

 相続ではその家庭の事情があからさまに表に出てきますので、財産のことで争わないような家庭を作っておく、日頃から物よりも大事なものがあることを教えておくことが理想です。しかし、これが日頃からできていて不安も争いの元もないのであれば、誰も苦労はしません。理想的と思えても、家族全員にかかわることになると、なかなか理想通りにいかないのです。

 相続人は時を経て、次は自分の相続人へと継承させることになります。親の代で揉めたところはまた次もとなりかねなません。マイナスのDNAは残さないことも財産になりますので、まずは、遺産分割でもめないために遺言を残すことを考えて下さい。これは1人の意思でも実現できます。

 

○遺言書はこっそり作らない・・・誰かが作らせたと思われることでもめる

 遺言書があればもめない相続ができると思いたいところですが、現実には、「遺言書があったことでもめてしまった」ことが多々あります。

 そうした場合、たいていは、遺言の存在を知っていたのは相続人の一部であることが多く、また遺言書の内容が特定の相続人に偏っているのです。たとえば、相続になって同居する長男が亡くなった父親の遺言書を出してきた。遺言書は“長男に全財産を相続させる”という内容で、他の相続人は遺言書の存在は一切知らされていなかったということです。 こうした場合、長男以外の相続人は、父親が自分の意思でその遺言書を書いたとは思わず、長男が財産を独り占めしたいために父親に遺言を書かせたとしか思いません。生前には父親から別の分け方を聞いていたり、預貯金はみんなで分けるようにと言われていたような場合はなおさら、長男を疑うようになります。

 自筆遺言書の場合、「筆跡が違う」と思う相続人は、筆跡鑑定をして裁判で遺言の無効を主張することもあります。公正証書遺言でも「父親は認知症で遺言できる状況ではなかった」と指摘されることもあり、ときに遺言の存在が問題になることがあります。

 長男に偏った遺言であれば遺留分減殺請求ができますので、長男に財産の公開を求めることになりますが、預貯金の額を教えず、通帳なども見せないという反応となることはよくある話で、最初から喧嘩腰ということさえあります。こうなると遺言書があったために、かえって悪感情を引き出してしまう結果になりかねません。

 こうした現状から教訓を引き出すのであれば、「遺言書はこっそり作らない」ことが大事だということです。いままでの遺言書は、「こっそり書いて、誰にも見つからないように隠しておく」というイメージでしたが、これではうまくいきません。争いのない相続を用意しようというのであれば、遺言書は相続人全員に作ることや内容をオープンにしておくことが必要です。これができていないとせっかくの遺言書が仇になることもあるのです。

 

【遺言書があってももめることもある】

・遺言の存在を知らない相続人がいる

・遺言の内容が特定の相続人に偏っている

・遺言の中に名前がない相続人がいる

・普段言っていた内容と違う

・特別受益や寄与分の考慮がない

 

 

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