事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
夢相続 解決レポート
叔母の借地権買取と自宅建替え、家族信託で実現する「相続税削減と安心の暮らし」

【相談者の事情】
相談者:Tさま(女性・40代、ご主人様とご一緒にご相談)
家族関係:
ご相談者の叔母様にはお子様がいらっしゃらず、本来の法定相続人は兄弟姉妹(現状ではお母様)となります。
Tさまご夫妻は、叔母様の財産管理や今後の相続についてご夫婦で情報を密に共有されており、ご主人が会計面などを担当されています。すでに叔母様との間で家族信託契約を締結し、預金等を預かって管理していらっしゃいます。
しかし、叔母様の体調悪化や認知症の進行、さらに借地契約の更新時期が迫ってきたことなど、多くの課題が重なったことから、今後の財産管理、不動産の処分・建替え、そして莫大な相続税負担への対策についてご相談にお越しになりました。
【資産構成】
不動産:ご自宅(土地は借地、約65坪・建物面積約226㎡)、倉庫、隣接地等
金融資産:約1,299万円
株式:約1,753万円
生命保険:約1,258万円
合計:推定相続財産 約1億4,000万円規模
【課題の整理】
今回の事例における大きな課題は、以下の4点に集約されます。
1.借地権のままであることの制約と更新時期の切迫
現在の自宅土地は長年借りている借地であり、20年ごとの更新時期が間近に迫っています。借地のままでいると、建替えや売却、担保設定等の際に地主の承諾が必要となり、活用の自由度が著しく制限されます。また、近年路線価が急上昇していることから、試算される借地権価格および底地部分を踏まえ、地主が路線価等を基準に売却してくれるうちに早めの交渉・所有権化を進める必要がありました。
2.高額な相続税の負担と法定相続人の少なさ
現状のまま相続が発生した場合、法定相続人はお母様1人のみとなり、基礎控除は3,600万円にとどまります。約1億4,000万円規模の財産に対する相続税額は約2,403万円と試算され、ご家族にとって非常に重い負担感となっていました。
3.不動産の有効活用と資金計画の難しさ
敷地内には築年数の経過した倉庫(現在は非賃貸)や隣接する未使用の家屋があり、これらを含めた有効活用が求められていました。一方で、建替え費用や土地購入資金をどのように捻出するか、家賃収入による借入金返済と叔母様の生活費確保を両立させる緻密な資金計画が必要不可欠でした。
4.叔母様の健康状態・認知症とご自宅への強い思い入れ
叔母様は体重が大幅に減少するなど体調が極めて悪く、入退院を繰り返していらっしゃいます。認知症の進行により判断力にばらつきがあり、長年住み続けている自宅への思い入れが非常に強く、家を離れることや建替え・施設入所に対する抵抗感が強くありました。
【提案(ソリューション)】
これらの複雑な課題を解決するため、夢相続では以下の総合的なソリューションを提案しました。
1.土地の買い取りによる所有権化
地主から土地を買い受けて所有権化し、借地から脱却する方針を立てました。これにより、建替え・売却・担保設定等の選択肢が大きく広がり、土地活用の自由度を高めます。また、土地購入により現金は減るものの、適正価格であれば相続財産総額が大きく減るわけではなく、その後の活用基盤となります。
2.「自宅+賃貸住宅」の建替えによる相続対策
土地を所有権化した上で、現在の古い建物を建替え、Tさまご家族と叔母様が居住できる自宅スペースに加え、一部を賃貸住宅として設計する案を提示しました。賃貸部分からの家賃収入で建築借入を返済し、叔母様の財産を原資とすることで、Tさまご夫妻自身の資金負担を極力抑えます。また、建築借入金が相続財産から控除されることや、建物評価の圧縮効果により、相続税負担を大幅に軽減させます。
3.小規模宅地等の特例の活用と居住実態の伴う移行
将来的にTさまご家族が叔母様の自宅へ転居し、現在の自宅スペースと賃貸部分を適切に組み合わせることで、「特定居住用宅地等」および「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例を適用できる体制を整えます(形式的な同居ではなく、実態を伴う計画を慎重に構築)。
4.養子縁組の検討による相続人の増加
法定相続人がお母様1人である状況を改善するため、養子縁組を活用して法定相続人を増やす選択肢を提示しました。これにより、基礎控除額の拡大、相続税率の緩和、生命保険金の非課税限度額の増加など、多面的な節税効果を狙います。
5.家族信託の活用による円滑な財産管理
すでに締結されている家族信託契約を軸に、判断力にばらつきがある叔母様の財産から、受託者(Tさま側)が適法かつ適切に土地購入・建替え・借入金の手続きを行えるスキームを確認・徹底します。
【解決(成果)】
現在は、具体的な数字を盛り込んだ複数パターンの提案書(「自宅建替え案」「隣接地を含めた活用案」「賃貸併用案」等の比較)の作成を進めています。
借地権の買い取り交渉の早期着手、最新路線価に基づく正確な資産評価の再確認、そして相続税の試算と借入・収支バランスの検証を並行して行うことで、以下の成果を見据えた道筋が明確になりました。
- 高額な相続税負担(約2,403万円)の大幅な軽減と納税資金の確保
- 借地から所有権への移行による不動産の資産価値と自由度の向上
- 賃貸併用住宅による、借入金の家賃返済と叔母様の生活資金の安全な確保
- 家族信託と綿密な意向尊重を通じた、叔母様の安心できる暮らしとご家族の負担軽減の両立
【相続実務士の視点】曽根メソッド
今回の事例のように、土地が「借地」であり、かつ所有者ご本人に認知症の進行や自宅への強い思い入れがある場合の相続対策は、単なる節税や不動産活用の枠を超えた、極めて繊細な配慮が求められます。
曽根メソッドの根幹は、「ご本人の感情面(思い出や住み慣れた家への愛着)と、経済面(高額な相続税負担や借地権の更新・所有権化の必要性)を高度に両立させること」にあります。
特に、高齢で判断力に不安がある方の不動産処分や建替えを進めるにあたっては、形式的な法律論だけでなく、すでに締結されている「家族信託」の権限を正しく活用し、受託者であるご家族が本人の生活環境や意思を尊重しながら安全に進めることが不可欠です。
また、土地の買い取りタイミング(更新期限を見据えた年内契約の検討)や、借入金を活用した債務控除・小規模宅地等の特例の適用など、税務と不動産実務を網羅した緻密なシミュレーションを行うことで、ご家族の資産を守りながら、次世代へ安心して引き継ぐオーダーメードの解決策を導き出すことができます。これこそが、家族の絆と財産を同時に守り抜く相続設計の要諦です。
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◆執筆
相続実務士® (株)夢相続 代表取締役 曽根恵子
【相続実務士】の創始者として1万15000件の相続相談に対処。
夢相続を運営し、感情面・経済面に配慮した”オーダーメード相続”を提案。
”相続プラン”によって「家族の絆が深まる相続の実現」をサポートしている。
- 相続関連著書・監修:92冊、累計88万部
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