事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
夢相続 解決レポート
家庭裁判所の職権調査を動かした!行方不明の相続人捜索と円満な遺産分割を両立させた「夢相続メソッド」

【相談者の事情】
■ 突然のパニック:一人暮らしの父が急逝、残された家族の戸惑い
相談者である長女は、一人暮らしをしていた父親が急逝したことで、今後の手続きに途方に暮れて相談に訪れました。母親は数年前に他界しており、法定相続人は長女、次女、そして数年前に病死した長男の子供たちにあたる姪と甥の合計4名でした。
■ 代襲相続の壁:20年以上音信不通だった「長男の子供たち」
問題は、亡くなった長男の家族との関係性にありました。長男は20年以上前に離婚しており、子供たちは母親が引き取って育てていました。相談者や次女、また生前に意思疎通が困難な時期もあった父親も、離婚以降は彼らと全く付き合いがなく、連絡先も生死すら分からない状態が続いていました。 長男が健在であればスムーズに話し合いが進んだはずですが、法律の規定により、相続開始前に死亡している長男の相続権は、その子供たちへ「代襲相続」として引き継がれます。
■ 懸命の捜索と限界:姪の特定には成功するも、甥は「行方不明」に
長女は戸籍謄本を手繰り寄せて姪の連絡先を特定し、協力の意向を得ることに成功したものの、もう一人の代襲相続人である甥については、住民票の除票や戸籍の附票をたどって手紙を送っても返答がなく、現地を訪ねても居住の気配がない「行方不明」の状況に陥ってしまいました。
■ 膨らむ負担と焦燥感:重くのしかかる「空き家」の維持管理費
父親の残した実家は空き家となり、水道光熱費や固定資産税などの維持費、庭の除草やゴミ処分などの管理費用が毎月相談者たちの肩に重くのしかかっていました。遺産分割協議は相続人全員の同意が必要であり、1人でも欠ければ実家の売却も預貯金の解約も一切できません。相談者は「このままでは何も進まない」と深い不安と焦燥感を抱えていました。
【資産構成および収支精算の見える化】
遺産分割を適正に進めるため、残された財産と相談者側が立て替えた多岐にわたる費用を明確にし、完全なる「財産目録」を構築しました。
■ 財産および収入の内訳(取得財産・入金合計:約629万円)
- 不動産(実家土地・建物):550万円(最終売却価額)
- 預貯金(2口座の合計):約5万5,000円
- 公的還付金・生前引出金等:約74万円(各種保険・税金の還付金、生前引出金、香典料など)
■ 支払支出(相談者側立替経費総額:約197万円)
- 医療・葬儀・法要費用:約165万円(入院治療費、葬儀一式、49日法要・墓じまい費用)
- 不動産売却・維持管理費用:約66万円(残置物撤去、仲介手数料、水道料金・除草など)
- 公的手続き・窓口費用:約36万円(戸籍謄本等取得費、専門家へのコーディネート費用など) (※入金合計から立替経費を差し引いた、正味の相続財産額は 2,772,643円 となります)
■ 法定相続割合による按分額(1円単位まで厳密に精算)
実家の売却代金等からすべての立替経費を差し引いた正味財産を、法律で定められた割合で配分しました。
- 長女(相談者):約92.4万円(3分の1)
- 次女:約92.4万円(3分の1)
- 姪(代襲相続人):約46.2万円(6分の1)
- 甥(代襲相続人・行方不明):約46.2万円(6分の1)
【課題の整理】
本件の最優先課題は「行方不明の相続人がいる状態でどのように遺産分割を成立させるか」にありました。通常、このようなケースでは家庭裁判所に「不在者財産管理人選任の申立て」を行う必要がありますが、これには3つの大きなハードルが存在しました。
- 莫大な時間と手間:行方不明の立証(現地調査報告や聞き込み)に数ヶ月を要する。
- 高額な予納金リスク:管理人(弁護士等)への報酬として数十万〜100万円以上の予納金を求められるケースがあり、今回の財産規模では経済的合理性を失う恐れがある。
- 機動的な不動産売却の制限:選任後も不動産処分には家庭裁判所の許可が必要となる。
また、相談者たちが身銭を切って立て替えていた約196万円の経費について、長年疎遠であった代襲相続人にどのように説明し、納得してもらうかという「立替金精算の透明性」も極めて緻密な整理が必要でした。
【提案(ソリューション)】
単なる事務手続きの代行にとどまらず、経済性と親族間の心理的側面に配慮した以下の3ステップを提案・実行しました。
① 丁寧な事前準備と想定問答の構築
司法書士と密に連携し、不在者財産管理人の申立て準備を即座に開始。家財や通帳の管理状況、不明な本人の固有財産に関する情報など、裁判所から確認されやすいポイントを事前に整理しました。関係者が一貫した回答を行えるよう想定問答を作成し、意識共有を徹底しました。
② 財産の完全なる可視化と不動産活動の並行
手続きの長期化を見据え、並行して不動産の売却活動を開始し、現地の状況を正確に把握。同時に、ゴミ袋代や細かな粗大ゴミ処分費用にいたるまで、すべての領収書を整理して1円の狂いもない明細書を作成しました。誰が見ても「正当な経費である」と証明できる状態を整えました。
③ 諦めない所在調査の継続
安易に「行方不明だから管理人を立てる」という事務作業で終わらせず、職権調査や裁判所への働きかけを通じて、本人の探索を強く促すよう書類の書き方を工夫しました。わずかでも直接協議に移行できる可能性を残すための布石を打ちました。
【解決(成果)】
■ 裁判所を動かした執念:調査官の職権調査で「甥の居場所」を特定
この徹底した事前準備と諦めない姿勢が、家庭裁判所を動かす大きな契機となりました。申立てを受けた家庭裁判所の調査官が、事案の緊急性を鑑みて独自の職権調査(住民基本台帳ネットワークの追跡や行政機関への照会など)を駆使した結果、なんと音信不通だった甥の「現在の本当の居場所」を特定したのです。
■ 誤解が解けた瞬間:悪気はなかった甥、実情を知り「全面協力」へ
裁判所からの直接連絡に応じた甥は、悪気があって連絡を絶っていたわけではなく、環境の変化から一歩引いていただけでした。父親の逝去や、相談者たちが実家の片付けや手続きに多大な苦労を重ねていた事実を知り、深く恐縮されるとともに「遺産分割には全面的に協力します」との意向を示されました。
■ 無駄なコストを回避:高額な「不在者財産管理人」の申立てを取下げ
本人が見つかったことで、費用と時間のかかる不在者財産管理人の申立ては不要となり、取り下げ手続きを行いました。
■ 信頼を生んだ「見える化」:精密な明細とゴミ処分の苦労に一同が深く納得
その後、「夢相続」が作成した精密な財産目録と、すべての領収書に基づく支出明細を提示。相談者たちが数十キロ単位のゴミを何度も運び出し、多額の費用を立て替えていた事実が視覚的に一目で伝わったため、代襲相続人であるお二方も深く納得されました。
■ 最終成果
実家を5,500,000円で売却し、すべての立替経費を差し引いた正味財産2,772,643円について、1円の狂いもない「法定相続割合」による遺産分割協議書が全員の署名・捺印をもって無事に成立しました。相談者の立替金も100%精算され、空き家問題も解消。最初のご相談から1年を要した難件でしたが、一切の禍根を残さず、全員が納得する円満な解決を迎えました。
【相続実務士の視点】曽根メソッド
■ 遺言書が1枚あれば、これほどの苦労は必要なかった
今回の事例は、「生前に遺言書が1枚あれば、これほどの苦労は全く必要なかった」という、遺言の重要性を痛烈に示しています。もし父親が「全財産を長女と次女に相続させる」あるいは「実家を処分して経費を引いた残額を二人に分け与える」といったシンプルな遺言書を遺していれば、代襲相続人の署名捺印は不要であり、数ヶ月以内にすべての手続きが完了していました。
■ 「うちは揉めない」「財産がないから関係ない」という誤解
「うちは家族の仲が良いから揉めない」 「大した財産はないから遺言なんて大げさだ」と考えがちですが、多様化する現代の家族形態において、子供が先に亡くなり、疎遠な孫が代襲相続人になるケースは珍しくありません。親の関知しないところで、残された子供たちが大きな負担を背負うことになるのです。
■ 形式的な手続きで終わらせず「家族の縁」を手繰り寄せる
安易に形式的な手続き(費用と時間のかかる不在者財産管理人の選任など)だけで終わらせず、誠実な財産目録によって親族間の信頼を築き、裁判所とも連携して「家族の縁」を手繰り寄せることが真の解決につながります。
■ 元気なうちに遺言書を:残される家族への「最大の優しさ」
少しでも家族関係に複雑な背景がある場合は、元気なうちに遺言書を作成しておくこと。それこそが、残される家族へ贈ることができる最大の優しさです。
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■執筆者
相続実務士 (株)夢相続 代表取締役 曽根恵子
【相続実務士】の創始者として1万15000件の相続相談に対処。
夢相続を運営し、感情面・経済面に配慮した”オーダーメード相続”を提案。
”相続プラン”によって「家族の絆が深まる相続の実現」をサポートしている。
- 相続関連著書・監修:92冊、累計88万部テレビ・ラジオ出演:300回超
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