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相続実務士実例Report

成年後見人の暴走!空き家の売却が必要なのに協力せず、解任。

 

■相続人は一人息子 成年後見人が必要な事情

Тさん(50代、男性)から相談がありました。80代の叔父が亡くなったが、急なことで遺言書はない。叔父はТさんの母親の兄。Тさんの母親は亡くなっているのですが、その葬儀やらで、生前、叔父とも交流があり、「自分の時は頼む」と言われていたと言います。

叔父が「自分の時は頼む」というには理由があります。Тさんにとってはいとこにあたる叔父の一人息子は生まれた時から障害があり、重度の障碍者として認定されています。ひとりでは生活できないため、ずっと病院で生活をしている状態だと言います。Тさんも何度か病院に会いに行っていますが、意思疎通が図れる状態ではありません。

叔父が健在の頃は後見人として手続きをしてきたのですが、急逝してしまったため、後見人がいない状況となり、早急に後見人を選任しなければいけない事態になったのですが、Тさんは困っているといいます。

 


■成年後見人は家庭裁判所が選任する

叔父の一人息子がそうした状態なので、叔父はТさんを頼りにしており、財産の内容の概略は聞いていました。叔父の財産は相続評価が1500万円ほどの自宅の土地、建物と預金2000万円程。相続税の基礎控除3600万円は超えないと想定されるということです。

叔父は自分が亡くなったら自宅は売却して息子の入院費用に充ててもらいたいと言っていましたので、不動産の売却や預金の解約手続きが必要になります。

相続人が手続きできればいいのですが、自分ではできないため、成年後見人が代わって手続きをすることになりますが、家庭裁判所に選任してもらわないといけないのです。

 

■成年後見人は一生 相続手続きだけではない

成年後見人の役割は相続手続きをすることが必須ながら、それだけではなく、亡くなった叔父の代わりに叔父の息子の後見をすることが主目的となりますので、これから“一生”となるのです。

そうなると病院の支払をはじめ、財産管理、定期的なお見舞いなどもあります。いとこが入院している病院の婦長さんのアドバイスでは、親族よりは介護や福祉に精通している人が望ましてのではということになり、病院が推薦するケアマネージャーさんを成年後見人として選任して家庭裁判所に申請して、選任されたのです。

 

■後見人は相続手続きに不慣れ。協力もしない

ようやくТさんの肩の荷が下りるところだったのですが、ここで問題が発生したのです。選任されたいとこの成年後見人は50代の女性でケアマネージャーですが、相続の知識や経験がなく、手続きを進めようとされないといいます。

それなのに預金だけは早く預かりたいとТさんに迫ってくるのです。

Тさんにすれば空家になった叔父の家は早めに売却していとこの病院費用に充てたいと考えています。また、亡くなったときの預金がТさんが聞いている額よりも増えているとなれば相続税の申告も必要になるため、それも視野に入れて申告期限までに明らかにしたほうがいいとアドバイスをしました。

ところが成年後見人になったケアマネージャーはТさんのアドバイスは聞かず、相続手続きのための打ち合わせをしようということも協力的ではないというのです。

 

■成年後見人の暴走が始まった

そもそも家庭裁判所へ成年後見人の選任申し立てをしたのはいとこのТさんで、相続手続きや空き家の処分を見据えて段取りをしてありました。夢相続が司法書士や空き家管理の会社を手配、相続手続きや不動産の売却ができるようにしていたのですが、成年後見人はТさんや夢相続、司法書との面談を拒否、相続手続きをすすめようとしないのです。

それどころか、病院の療育長さんによると、驚いたことに、成年後見人は「親族が結託していとこの財産の乗っ取りを図っているようだ」と事実無根の話を家庭裁判所でしているということも発覚。人柄的にも成年後見人に向いていないということがわかったと言います。


■不向きな成年後見には解任するしかない

Тさんは叔父が亡くなってすぐに相談に来られたのですが、こうした成年後見人の暴走のため、10ヵ月の申告期限は過ぎてしまい、1年経ちますが、まだ相続手続きができず、空家となった叔父の家の売却も進まずという事態に。

このままでは進まないため、ケアマネージャーの成年後見人は解任し、状況がわかっているТさんが成年後見人になるしかないとアドバイス。そのための手続きをすることにされました。

そののち、ケアマネージャーの後見人の解任は認められて、Тさんがあたらに成年後見人に選任されました。親族の場合は弁護士の監督人も選任されて、監督人弁護士に報告しながら手続きを進めるようになります。

ここまで1年。ようやく相続手続きが進められるめどがつき、Тさんもほっとされています。これから相続登記、預金の解約、空家の売却を進めて、相続手続きはひと段落します。その後は預金をいとこが必要な都度、入院費などの支払に充てられると本当のひと段落と言えます。

 

■成年後見人の解任について

成年後見人を解任する理由は、民法や家庭裁判所の実務に基づき、以下のようなケースが挙げられます。特に「被後見人の利益を損なう行為」や「職務の不適切な遂行」は、解任理由としてよく取り上げられます。

 

【成年後見人を解任できる主な理由】

  1. 職務を怠っている(放置・不作為)
  • 相続手続きを進めるべきなのに、何もしない・必要な判断をしない。
  • 財産の管理・報告義務を果たしていない。
  • 被後見人の生活や財産に明らかな支障をきたしている。
  1. 財産の不適切な管理
  • 被後見人の財産を勝手に使っている、私的流用している。
  • 投機的な運用や、明らかに不利益な契約を締結している。
  • 財産の管理状況に不透明な点が多く、説明責任を果たしていない。
  1. 家庭裁判所の指示に従わない
  • 裁判所からの報告命令・許可申請を無視している。
  • 定期報告書の未提出、虚偽記載がある。
  • 裁判所との連絡が取れない、協力姿勢が見られない。
  1. 利益相反行為をしている
  • 自身や家族の利益を優先するような行動をしている。
  • 相続人の一人として、自らの相続分を優先して被後見人の不利益になるような対応を取っている。
  1. 被後見人の利益を著しく害している
  • 相続に必要な手続きを妨げており、被後見人が正当な権利(相続分・遺産取得など)を行使できない。
  • 他の相続人との関係を悪化させ、法的・経済的損失を拡大させている。
  1. 成年後見人としての適格性がないと判断される
  • 認知症や精神疾患、重大な病気などで職務遂行が難しい。
  • 法律知識や社会的常識が欠如しており、判断力に著しい問題がある。
  • 後見人に刑事事件歴などの重大な非行が発覚した。

 

【補足】

成年後見人の解任には、家庭裁判所への申立てが必要です。申立てができるのは、利害関係人(例:他の相続人、親族、福祉関係者など)や検察官です。

 

■まとめ

相続人が重度障碍者であり、成年後見人が選任されたものの、相続手続きに理解がなく、協力しない場合に発生する不都合は以下の通りです:

 

【成年後見人が相続に協力しないことによる不都合】

  1. 遺産分割協議が進まない
  • 成年後見人は被後見人(障碍を持つ相続人)に代わって遺産分割協議に参加する必要があります。
  • しかし、成年後見人が相続の仕組みや重要性を理解していない場合、協議に同意せず、話し合いが前に進まなくなります。
  • 遺産分割協議書が整わず、不動産の名義変更や預貯金の解約ができません。
  1. 不動産の売却や活用ができない
  • 共有状態の不動産などは、相続人全員の合意が必要です。
  • 成年後見人が同意しなければ、売却や活用ができず、収益化が止まります。
  • 結果として、相続税の納税資金が確保できない、収入が得られないなどの損失が生じます。
  1. 相続税申告期限に間に合わないリスク
  • 相続税申告は相続開始から10か月以内に行う必要があります。
  • 成年後見人の対応が遅れることで、遺産分割が決まらず、申告が遅れたり、特例(配偶者控除・小規模宅地の特例など)が使えなくなったりする可能性があります。
  1. 家庭裁判所への申立てが必要となり、手続きが煩雑に
  • 成年後見人が遺産分割に同意するには、家庭裁判所の許可が必要なケースが多く、さらなる手続きと時間がかかります。
  • 意向確認や書類の整備など、専門的な知識が必要になるため、成年後見人が素人だと対応が困難になります。
  1. 後見人自身が消極的・非協力的であるケース
  • 親族後見人などの場合、そもそも相続問題に関わりたくない、面倒だという理由で非協力になることがあります。
  • その結果、相続全体が停滞し、他の相続人との関係も悪化する恐れがあります。

 

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