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欲深な姉たちには、1円も渡したくない。~きょうだい6人、相続でもめた末に「遺言と死後事務委任」を決意した女性の終活~

 

■姉たちには1円も渡したくない

「私の財産は、兄に全部遺したい。姉たちには、1円も渡したくないんです」
そう語ったのは、70代半ばの女性・Tさんです。

配偶者も子どももいないTさんは、相続人として兄と姉4人を持つ6人きょうだいの末っ子。昭和20年代生まれの彼女は、高度経済成長期の中で地方の定食屋に生まれ育ちました。家庭は裕福ではなく、両親が懸命に切り盛りする姿を見ながら、高校卒業と同時に上京して働き始めたといいます。

若いころから身一つで生活を切り開いてきたTさん。結婚はせず、以後も一人暮らしを貫いてきました。それほど多くないお給料で生活する中で、自分が安心して生活するためにマンションを購入しています。すでにローンも完済。不安はありません。

それだけでなく預金は3000万円残しています。現在は年金暮らしのため、いままでどおりに慎ましく暮らす日々ですが、誰にも頼らず、自分で切り開いてきた人生は見事だと言えます。


そんなTさんが「終活」を意識するようになったのは、図書館でふと手に取った1冊の本がきっかけでした。

「子どものいない人の終活準備」というタイトルのその本を読みながら、Tさんの中である“過去の記憶”が蘇ります。

 


相続でもめた「母の死」と「叔母の死」

Tさんの母親が亡くなったのは数年前のこと。その際の遺産相続をめぐって、姉たちの態度が豹変しました。

「兄と私は実家を離れて久しいので、お店を継いで、両親と同居してくれた長女や近くに住んで両親の介護に貢献してくれた姉たちには感謝はしていますが、相続の時の進め方に不信感を持ったと言います。

同居してきた長女は父親の時も、後で亡くなった母親の時も預金の内容を教えてくれませんでした。家を離れたものは相続放棄するものだと言わんばかりの高圧的な態度で取り付く島なし。兄も、私も、財産が欲しいということではなく、明らかにして説明してもらいたかったのです。

続いて起きたのが、叔母(亡父の妹)の相続。子どものいなかった叔母が亡くなった際、法定相続人となったのはTさんたち兄弟姉妹で、亡叔父の子2人も同様に代襲相続人で、合計8人が相続人です。

「叔母は実家のすぐ近くに住んでいたので、老後はやはり長女が預金などの管理をしており、亡くなったときに、また長女が明細を出さなかったため、次女、三女が家裁に申し立て争いになったのです。きょうだいがお金のことで争う姿を見て、恥ずかしくなり、兄と自分は叔母の財産は放棄しました。」
相続がきっかけで姉たちの本性を見たと感じたTさんは、「もう欲の深い姉たちに、自分の財産を託す気にはなれないし、老後も頼りたくない」と心に決めたのです。

 

財産は兄にすべて。姉には一切渡したくない

「実は、兄には若い頃にすごく助けられたんです」
Tさんが20代で上京して苦労していた頃、当時サラリーマンだった兄が、生活費を何度か支援してくれたといいます。

「だから、私の財産は兄に全部渡したい。姉たちには一切渡したくない。むしろ葬儀にも呼びたくないと思ってるんです」
そう言い切るTさんの目には迷いがありませんでした。

ただ、法律上はTさんのように配偶者も子もいない場合、「兄弟姉妹」が法定相続人になります。つまり何もしなければ、姉たちにも法的に相続権が発生してしまうのです。

「それは嫌です。私は自分の意思で遺したい」
その強い気持ちを実現するため、私たちは2つの対策を提案しました。

 

自分の意思を形にする2つの終活対策

公正証書遺言の作成

 

まず、Tさんは「全財産を兄に相続させる」という内容の公正証書遺言を作成しました。

遺産の内容は、大きく分けて以下の2つです。

  • 自宅マンション(ローンなし)
  • 預金 約3,000万円

Tさんは、兄にマンションごと遺すのではなく、遺言執行者が売却して現金化し、預金と合わせて兄に現金で渡すことを明記しました。
これは、兄が高齢で不動産の管理が困難なことを考慮しての配慮です。

また、兄が先に亡くなっていた場合には、兄の子(姪)に全財産を遺贈するという二次的な指定も行いました。これにより、「最も感謝している兄の家系に残す」ことが確実に実現されます。

 

死後事務委任契約の締結

次に、Tさんが強く希望したのが、「姉たちには葬儀も知らせたくない」という点でした。
これを実現するには、死後の手続きを誰に任せるかを生前に契約で定めておく必要があります。

また、自分より年上の兄が存命であったとしても、葬儀や不動産や家財の処分を引き受けてもらうのは心苦しいと考えています。よってそうした手配を誰かに託さないといけないと思いだしたのです。

「死後事務委任契約」は、生前に本人と信頼できる人(この場合は兄)との間で、「死後の事務手続き(葬儀・火葬・納骨・行政手続きなど)」を委任する契約です。
今回は、公正証書で作成し、Tさんの意向(通知先を限定・式典は行わず火葬のみ)を文書に明記しました。

 

少しは自分のために使いたい。終活の先にある安心

財産の分け方をしっかり決め、契約書を作成したことで、Tさんの表情は晴れやかになりました。

「やっと決められてよかった。これで心が軽くなりました。あとは、少しだけ、自分のために使ってもいいですよね」
そう言って、Tさんは小さく笑いました。

老後資金として3,000万円の預金があり、住まいも確保されている今、ようやく自分の楽しみや安心のためにお金を使う気持ちになれたのです。

 

まとめ:財産をどう遺すかは、人生の総仕上げ

配偶者も子どももいない人にとって、「誰に遺すか」「どう遺すか」を考えることは、人生の最終章をどう生きるかにもつながります。

Tさんのように、過去の経験から「姉たちに遺したくない」という強い意思を持ち、それを遺言死後事務委任で形にすることで、初めてその想いが実現されるのです。

家族だからといって安心せず、むしろ家族だからこそ備えるべきことがある。
Tさんの終活は、多くの人にとって「自分ごと」として考えるきっかけになるはずです。

また、財産は残すためにあるのではなく、自分のために使ってもいい時代です。いままで始末してこられて、住む家があり、少しまとまったお金もあるので、これからは自分の楽しみや生きがいになることのためにお金を使ってはいかがでしょうとТさんにもお伝えしています。これからのТさんの日々が、いままで以上に豊かになればと願います。

 

 

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