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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

法務局は見ている!「実印」登録した印鑑とは違う?登記できない事態に!

■遺産分割協議書は実印押印、印鑑証明書を添付する

相続になったとき、遺言書があれば、亡くなった人の意思として優先します。けれども遺言書がない場合や遺言があっても遺産分割法についての指定がない場合などは、相続人全員で話し合い、納得のいく分割を決めるようにします。遺産の分配を「遺産分割」といい、その割合を「相続分」といいます。遺産分割は、必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はなく、相続人全員が納得すればどういうふうに分けてもかまいません。

 いろいろな状況を考慮し、話し合い、遺産分割の内容がまとまって、全員の合意が得られたときは、「遺産分割協議書」を作ります。この協議書は相続人全員が同意をしたという証拠になり、後の争いになることを回避します。そのために、「実印」を押印し、印鑑証明書を添付するのです。

 

■遺産分割協議の作り方

遺産分割協議書の作り方には決まったルールはありません。①相続人全員が名を連ねること、②印鑑証明を受けた「実印」を押すことの2点が必須となります。未成年者や認知などで代理人を選任した場合は、代理人の実印、印鑑証明が必要になります。

 

 〔遺産分割協議書の作成例〕

 

遺 産 分 割 協 議 書

 

被相続人 ○ ○ ○ ○(○○年○○月○○日死亡)の遺産については、同人の相続人の全員において分割協議を行った結果、次のとおり遺産を分割し、取得することに決定した。

1.相続人 ○ ○ ○ ○は被相続人 ○ ○ ○ ○の次の遺産を取得する。

 (1)土 地 所  在  ○○○市○○○町三丁目

        地  番  ○○番○○

        地  目  宅 地

        地  積  ○○○.○○㎡          

2.相続人 ○ ○ ○ ○は被相続人 ○ ○ ○ ○の次の遺産を取得する。

    1)○○銀行○○本店 定期預金(口座番号○○○○○○○)
    2)○○銀行○○本店 普通預金(口座番号○○○○○○○)

3.本協議書に記載なき資産及び後日判明した遺産については相続人○ ○ ○○が取得する。

上記の通り、相続人による遺産分割の協議が成立したので、これを証するため、本書2通を作成し、各1通ずつ所持する。

 

令和  年  月  日

○○○市○○○丁目○○番○号

    相続人   ○ ○ ○ ○         実印

 
   

 

 

○○○市○○○丁目○○番○号

    相続人   ○ ○ ○ ○         実印

 

 

■そもそも印鑑登録とは?

印鑑登録(いんかんとうろく)とは、印鑑により個人や法人を証明する制度です。居住地の市区町村で登録、発行しています。印鑑登録をしたことを証するものを印鑑登録証と言い、印影と登録者の住所・氏名・生年月日・性別を記載したものを印鑑登録証明書(印鑑証明)といいます。1人につき1個の印鑑(印章)しか登録できないため、変更したい場合は再度、登録し直す必要があります。

登録者が請求すると、各自治体の首長の証明印入りで発行されるため、本人証明書類としても有効です。

不動産を登記する際、遺産分割協議書には実印を押印するため、印鑑証明書は必須の添付書類となります。また、不動産の売却や贈与などで所有権移転登記の際には、所有者は印鑑証明書にて本人確認をするため、添付が必須となります。

実印とする印鑑は、本人が決めたものであれば、どんな印鑑でも登録できると言えます。

 

■事例1 似たような印鑑は実印ではなかった

Мさんは15年前に父親が亡くなり、きょうだいで遺産分割協議をした結果、自宅は長男のМさんが相続することで合意。遺産分割協議書や戸籍関係、印鑑証明書など相続登記に必要な書類は揃えて登記するばかりになっていました。

ところが本人のМさんが仕事の忙しさなどから登記申請をすることをすっかり失念してしまい、あらためて相続登記をしたいと相談に来られました。

登記関係の書類は1冊のファイルにまとまっていて、あらたに登記申請の委任状を作成するだけで、遺産分割協議書や戸籍関係、印鑑証明書など当時の書類はそっくり使えることがわかり、司法書士により法務局へ登記申請をしました。

ところが、遺産分割協議書の印と印鑑証明書の印が違うと法務局から指摘があり、登記申請が差し戻されたのです。Мさんの実印登録の印は、名字だけの印鑑で、よくある認印です。似たように印鑑がいくつかあるというので、持ってきてもらって押してみると。法務局の指摘のとおりで、遺産分割協議書に押した印鑑は実印ではないということが判明。押印してある印鑑の隣に正しい実印を押し直して、法務局について再申請してもらい、無事に15年前の相続の登記は完了したのでした。

 

■事例2 明らかに陰影が違う 朱肉をつけすぎたのとも違う

Mさんは夫が亡くなったため、3人の子どもと遺産分割協議をして、自宅の名義をYさんに変えることになりました。子どもたちはまだ30代で、印鑑証明書が必要な契約などをした経験がなく、実印を作っていない状況でした。

相続の手続きをするということで、子どもたちのそれぞれが実印登録をして、遺産分割協議書に調印することになりました。仕事や住まいの都合で、それぞれ実家を離れて生活しており、集まるのは大変にことから、順番に押印して仕上げることで、遺産分割協議書が出来上がり、司法書士に依頼して、相続登記の申請をしました。

ところが、ほどなくして法務局から長女が押印した印鑑と実印が違うと指摘があり、司法書士から連絡があったのです。

長女の実印はやはり名字だけの認印です。よく見ないと違いがわかりませんが、法務局では印鑑証明書と照らし合わせて、違いを発見したということでしょう。

戻ってきた遺産分割協議書と印鑑証明書を照らし合わせてみると確かに大きさが少し違うのとはねるところが違うということがわかりました。

長女に確認すると、同じような認印が3つあり、どれを実印にしたのかわからなくなって勘違いしたと言います。そこで、3つとも持参してもらい、押して確認してみるとこれが実印だという印鑑の確認ができましたので、遺産分割協議書の押印の隣に正しい実印を押し直すようにしました。それで法務局に申請し直し、無事に相続登記は完了したのでした。

 

■法務局はきちんと確認する

この2つの事例は同じように認印で実印登録をしたため、他の認印と混同してしまったという内容です。こうした事態にならないように、フルネームの入った印鑑で実印登録をすることがふさわしいということでしょう。

また今回は相続登記の場面で、特に時間的な制約がなかったために登記申請を取り下げて、印鑑を見つけて、押印し直し、再提出することができましたが、相手がある売却では当日になって実印が違う、見つからないということになれば事態は大事になります。実印が見つかせなければ、実印登録をし直せば済むことではありますが、当日の出来事となれば迷惑をかける人も出てくるため、やはり、実印の管理は不可欠と言えます。

登記の専門家である司法書士や職員の人が気が付かない実印の違いを法務局の担当官が見逃さずに発見するということはやはり数をこなしているプロだということでしょう。

印鑑を間違えた本人も故意ではなく、気が付かない、思い込みのことではありますが、登記申請のし直しということになりますので、注意が必要です。

 

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