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父親の相続の調停に7年。不動産を売却してようやく財産になる!

 

■遺産分割協議がまとまらず、調停に

Sさん(70代・男性)から「父親の相続と母親の相続の調停が終わり、審判が下りたので不動産の売却をしたい」と連絡を頂きました。父親が亡くなった時に母親と子どもたち4人の遺産分割協議がまとまらず、調停になり。長引いてしまったためにその間、母親も亡くなりました。それからまだ3年もかかり、ようやく7年かけて終わったということです。

長女対母親+長男、次男、三男という図式の対立でしたが、長女が自宅を、長男、次男、三男がアパートを相続することで調停がまとまりましたので、3人はそのアパートを売却したいということです。

 

■なぜ、もめたのか? 子ども4人のところ、不動産は2つ。

父親の財産は2つの不動産で、3000万円の自宅と母親と共有名義になっている3階建て9世帯のマンションは持ち分2分の1の評価が4000万円、預金が2000万円、合計で9000万円とだったといいます。

その当時は、相続税の基礎控除が5000万円+相続人1人1000万円でしたので、Sさんの父親の相続税の基礎控除は1億円ありました。よって相続税はかからず、申告も不要だと判断されました。税務署にはなにもしなくてよいということです。

そうなると次は財産の分け方を決めることになります。法定割合は母親2分の1、子どもたちが8分の1ずつとなります。けれども、財産の多くを占める不動産が2つしかなく、これが課題となりました。要は分けられない。そうした状況をさらにまとまらなくしたのが、長女の主張です。

 

 

■長女は二世帯住宅を建てて、両親と同居してきた

相続税はかからないので、一安心でしたが、財産の分け方を決めて、相続の手続きをしなくてはなりません。遺言書がない場合は、相続人で遺産分割協議をする必要があります。

Sさんの両親は一番上の姉家族が同居してきました。父親名義の家が古くなったときには、姉夫婦もお金を出し、二世帯住宅に建て替えています。よって自宅の建物の名義は父親が2分の1、義兄が4分のし、姉が4分の1となっています。Sさんと弟二人は仕事の都合や結婚を機に実家を離れていますので、実家を母と姉が相続する分には異論はありません。

 

■賃貸マンションは自宅の敷地にあり、家賃収入もある。姉が自宅もマンションも欲しいと主張!

父親のもう一つの不動産は自宅の敷地内にあります。軽量鉄鋼造3階建て1Kが9世帯あり、1世帯5万円の賃料が入り、月額45万円の収入があります。最寄り駅より徒歩10分の立地で父親が亡くなった時は満室で稼働していました。自宅敷地内ということもあり、マンションの家賃は両親の生活費となっていました。

姉は自宅の隣に建つマンションも、高齢になった両親の代わりに家賃の入金確認や共用部分の清掃など管理をしているので、自分が相続すると主張してきました。

それでは姉の独り勝ちとなるため、母親とSさん兄弟は当然、反対しましたが、姉が譲らず。致し方なく、母親とSさん兄弟が調停を申し立てたのでした。

■調停の途中で、母親が亡くなった 自筆証書遺言あり、法定割合で申告

調停が長引いたため、3年前に母親が亡くなりました。母親の財産は評価4000万円のマンションの土地、2分の1とマンションの建物1000万円、預金3000万円で8000万円。相続税の基礎控除は4人で5400万円ですので、相続税の申告が必要でした。

母親は調停の様子で子どもたちが話し合いがつかないことが分かっていましたので、自筆で「自分の財産は長男、次男、三男に等分で相続させる」という遺言書を残していました。家庭裁判所の検認を済ませましたが、当然のように姉より遺留分の請求が起こされましたので、父親の調停の話し合いの中に組み入れて、解決することになりました。

その間、申告の期限が来ますが、間に合わないため、法定割合で未分割として相続税の申告を済ませています。

 

■担当弁護士はマンションの売却を見据えて空室にした

賃貸マンションは父親が亡くなった当時ですでに築35年を経過していました。調停が始まり、売却を見据えて、自宅の土地を母屋とマンションに分筆して準備を始めましたので、マンションも解体して更地で売却することを想定し、Sさんたちが依頼した担当弁護士は、マンションが空いたあとは募集をせずに、調停の間には全部、空室となったのでした。

満室の時には家賃が45万円入っていましたが、空室になって3年間は家賃収入はなしという状況。けれども売却を見据えては致し方のない選択肢で言えるでしょう。

 

■マンションはすぐに相続登記。売却は調停後、1ヶ月で契約できた

Sさんから調停の審判書や母親の自筆証書遺言の検認書の原本を預かり、各人の戸籍謄本や住民票、なども合わせて、相続登記をするようにしました。調停が終わっても、それだけでは自宅もマンションも亡くなった父親と母親名義のままです。売却するには、相続人の名義に登記する必要があります。

合わせてマンションの売却活動を始めましたところ、建て替えを前提として購入希望の法人から申し込みが入り、1カ月後には売買契約をすることができました。

すでに測量、分筆は終わっているため、測量図、境界確認の同意書などを添付することで、売買の要件は満たします。また、建物は、売主が解体、更地渡しが一般的なところ、買主が引き受けてくれることとなり、現状のまま引き渡すことで了解が得られました。売主側で解体費の負担が少なくなり、それだけ高く売ったことになります。

結果、審判が下りた3か月後に売買代金の決済ができることになり、ようやく、Sさんたち兄弟は自分の財産となるということになります。

Sさん兄弟は、調停が想定以上に長引いて心を痛めておられましたが、ようやく、調停が終わり、相続登記もでき、売却もスムーズでよかったと言っておられます。共有名義で3人の登記となりましたので、契約も3人で行いますが、そうしたことで実感もあり、ようやく長かった相続が終えられそうです。

 

 

■未分割での相続税の申告は修正申告をする

母親が亡くなった時に法定割合で提出している相続税の申告は、審判が下りてから4か月以内に修正申告をする必要があります。遺産分割協議書に代わるものが家庭裁判所の調停調書になります。

調停でもほぼ法定割合になりましたので、取得割合はそれほど変わらないのですが、長女が自宅を取得することが決まり、小規模宅地等の特例が適用できるようになり、相続税は〇となりました。

未分割では小規模宅地等の特例は使えないため、全員が70万円ほど納付をしていますが、修正申告をすることで、全員、還付されることになりました。



■相続を円満に終えるための教訓

子どもが4人いるのに、不動産は2つ。自宅に同居している子どもがいて、2つ目の不動産は自宅の敷地内。こうした状況では分けにくい、分けたくないとなるのが当然かもしれません。

この場合は、父親、母親の遺言書は必須で、用意しておくべきでした。

長女が同居して、マンションも管理していると言えども、現在は財産は等分に分ける時代。自宅は長女に、マンションは売却して3人に等分にとしておけば、調停に費用や時間をかけることはなかったと言えます。

 

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