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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

親の不動産を借りて賃貸事業をするには?建物贈与を受ける方法がある!

 

■遺言書があり全財産を相続

Aさん(40代女性)から相談がありました。Aさんは70代の母親と母親名義のマンションで同居しています。

5年前に父親が亡くなった時、父親の財産は母親が相続しました。父親は体調を崩したときに遺言書を作成していて、「財産はすべて配偶者に相続させる」という内容でした。ふたりの兄も、Aさんもそれについての異論はありませんでした。

よって母親は自宅マンションと駐車場と貸店舗と預金を保有しています。財産評価は合わせて5000万円程で、相続税の申告は必要なかったと言います。

 


■固定資産税がかかるだけの空き家

貸店舗は父親が別荘感覚で購入したもので、緑が豊かな山間にあります。1階が貸店舗、2階、3階が住居で、1、2階を貸し、3階は別荘として使っていました。

父親が元気なころは家族で出かけたりしていましたが、父親が60代になって体調が思わしくなくなり、行くことも叶わなくなったのでした。

1階はカフェで、2階も住まいとして借りてくれていましたので、1,2階の家賃が入っていましたが、賃借人が高齢となり、昨年、お店を辞めて、転居するということで退去してしまい、現在は空き家になっています。それなのに固定資産税が5万5000円かかっているといいます。

 

■税理士に相談するとNOと言われた

母親は3年前に、自宅で転倒して大腿骨を骨折、入院、手術をしました。その後、リハビリに励み、だいぶ回復はしたものの、要介護3となりました。現在は自宅マンションで生活できていますが、以前のように出歩くことが難しくなり、貸店舗も退去したまま、次のテナントや入居者の募集ができていないといいます。

こうした母親の様子では、賃貸事業はAさんがサポートしないと継続が難しいため、これからは自分が主となり、貸店舗の募集をしようと考えました。それなら自分の収入としていいかと税理士に相談したところ、母親の不動産なので母親が確定申告をしないといけないと言われたのです。自分で申告をすることはできないのかというのがAさんのご相談でした。

 

■国税庁の税務相談室

念のため、国税庁の税務相談室にも問い合わせてみるようにお勧めしましたところ、税理士と同じ回答。
税についての相談窓口|国税庁

 

  1. 不動産所得は「所有者に帰属する」のが原則
     税務上、賃貸収入は原則として不動産の登記名義人=所有者に帰属します。
  2. 名義借りでの事業は認められない
     名義は親のままで、子が賃貸管理や募集、契約などを行っても、それだけでは「子の事業」とは見なされません。
     → 所有者が親である以上、収入も親に帰属します。
  3. 親が確定申告すべき
     賃料収入や必要経費(修繕費・管理費など)を計上し、親が不動産所得として確定申告する必要があります。

 

けれども、実務的には、子どもが親の不動産を無償で゜借りている使用貸借は多くあります。親の土地に子どもが自宅を建てて住んでいることは一般的ですし、親名義の不動産で子どもが賃貸事業をしていることもよくあります。

よって税務署に否認されない方法をアドバイスしました。

 

■自分の事業で確定申告

親名義の住宅を子どもが無償で借りて賃貸事業を行った場合、その不動産の所有者である親に賃料収入が帰属すると考えられるため、親がその賃料収入を申告し、所得税を納める必要があります。

そのため、子どもが賃貸事業をしている実態を作れば、子どもが家賃を受け取って確定申告をすることで認められます。

  • 賃貸事業の収益や支出が子の銀行口座で完結している
  • 親子間の賃貸借契約を締結し、子が親に地代を支払っている(この場合も親に地代収入がある)


■建物の贈与を受ける方法がある

税務署の指摘を避けるためには、「親が建物だけを子どもに贈与する」方法があります。そうすることで建物に対する家賃は子どもの収入となり、子どもが゛確定申告をすればいいのです。無償で貸している「使用貸借」は認められていますので、親に地代を払う必要もありません。

 

  1. 【建物の贈与で収入帰属が明確になる】
  • 不動産収入は登記名義人に帰属します。
  • 建物だけでも名義が子どもになれば、建物の使用に伴う賃料収入は子どもに帰属し、子どもの事業所得/不動産所得として確定申告します。
  1. 【土地を親が所有し、無償で貸す(使用貸借)の扱い】
  • 土地を親から無償で借りて使用するのは「使用貸借」契約にあたります。
  • 使用貸借の場合、親に地代を払う必要はありません
  • この使用貸借の提供に対して贈与税は課されません(ただし、「相続開始前3年以内に解除される」などの場合は注意)。

 

  1. 【注意点】
  • 土地と建物の所有者が異なる場合は、建物が借地権付き建物となり得ます。
  • 将来的に相続税の評価に影響します。たとえば、使用貸借の土地には「借地権評価がつかない(=相続税評価が下がらない)」とされるのが通例。
  • 建物の贈与時には贈与税の申告と納税が必要になる可能性があります(評価額による)。

     

    まとめ

    項目

    内容

    建物の名義

    子どもに変更(贈与)

    賃料収入の帰属

    子ども(確定申告が必要)

    土地の名義

    親のまま

    土地使用の取り扱い

    使用貸借(無償でOK)

    親に地代が必要か?

    不要(無償使用で問題なし)

    贈与税

    建物贈与時に発生の可能性あり

 

■贈与税は?相続時精算課税制度が使える

Aさんの母親が所有する貸店舗は木造3階建てで、築20年。土地50坪の固定資産税評価は150万円、建物の固定資産税評価は400万円です。

建物は固定資産税評価を市場価格として、400万円の価値として売買、贈与されますので、親子間であっても400万円で贈与を受けるとすれば否認されることはありません。

贈与税の基礎控除は110万円です。それを超える290万円に関して贈与税が課税されます。親からの贈与の場合、課税される額が400万円までの贈与税は税率15%-10万円で33.5万円の贈与税となります。

さらに親子であれば相続時精算課税制度。

■不動産の贈与登記の費用と取得税がかかる

 

不動産(建物)の贈与を受ける際には、登記費用と不動産取得税がかかります。建物400万円の登記費用と取得税の概算は下記となります。

 

登記費用(登録免許税)

贈与による所有権移転登記の登録免許税は、 

 固定資産税評価額 × 2%(建物の場合)

  • 固定資産税評価額:400万円
  • 登録免許税:
     400万円 × 2% = 8万円

司法書士報酬(任意)

司法書士に登記手続きを依頼する場合の報酬は、相場で 5万〜10万円前後です(内容や地域により変動)。自分で登記することもでき、その場合は不要

 

不動産取得税(贈与の場合)

建物の贈与でも原則として不動産取得税が課税されます。住宅用家屋で一定の要件を満たす場合は減額がありますが、自分で住まない場合は適用されません。
ここでは「減額なし」の前提で概算を示します。

 

  • 不動産取得税は、固定資産税評価額 × 3%(住宅用)または4%(一般)
  • 400万円 × 4% = 16万円


費用の合計(概算)

項目

金額(概算)

登録免許税

8万円

司法書士報酬(任意)

5〜10万円程度

不動産取得税

16万円

合計(司法書士込み)

29〜34万円程度

 

■まとめ

Aさんは母親が賃貸事業を継続することは実務的に負担があり、自分が継続しようと考えておられますので、建物の贈与を受けることをお勧めしました。登記費用や取得税はかかりますが、そうした手続きをすることで税務署から指摘を受けることなく、自分の収入にすることができます。贈与税の負担もありません。

Aさんは母親と相談して手続きを進めたいと検討されています。

 

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