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相続実務士が対応した実例をご紹介!

相続実務士実例Report

銀行は相続、遺言書、不動産の専門家ではない!?

◆父親は公正証書遺言を作成していた

相談に来られたМ様(50代女性)は「相続に困ったら最初に読む本」の読者さん。相続で困っていると相談に来られました。買って読んで頂いた本も持参されていました。

Мさんが来られたのは、90代の父親が亡くなり、相続の手続きをしているところだといいます。相続税の申告が必要な財産でもあります。父親が亡くなってから、兄から公正証書遺言があると知らさました。相続人は兄と、Мさんと妹の3人です。

困ったことは、父親が取引していた都市銀行が遺言執行者になっている遺言書の内容だと言います。

 

◆父親の財産の大部分は土地

父親の財産は広い自宅と貸宅地で、土地が財産の8割をしめています。母親は亡くなっていますので、配偶者の特例が使えず、同居する子どももなく、それぞれ自宅を所有していますので、家なき子でもないため居住用の小規模宅地等の特例が使えません。特例が適用できるのは、貸宅地で貸付用の小規模宅地等の特例200㎡まで50%減できる程度です。

父親の財産は約7億円、相続税は財産の30%、2億円を超える額になりそうだといいます。

相続税の申告に関しては、毎年の確定申告を担当している税理士法人に依頼をしています。公正証書遺言を作成するときも、この税理士法人と銀行が中心になって勧めたようです。

 

◆銀行から詳しい説明がない 納税をどうする?

実家を維持したいという話は兄から言われたことですが、公正証書遺言の執行者になっている銀行からは詳しい説明はありません。遺言書の証人になった行員2名は女性で、すでに退職していないということで、取引のある支店の担当者が対応しています。

相続税の申告を担当する税理士法人からは、1人7000万円程度の相続税の納税が必要だという説明を受けています。

貸宅地は3人に適度に割り振っての相続ですので、個々に売却をして、納税資金に充てたいと思うのですが、具体的にどのようにしていくのか、詳しい説明がなく、不安に思っているということです。

 

◆土地が共有になっている

Мさんが困っている公正証書遺言の内容は、広い自宅の土地についての記載です。兄、Мさん、妹の3人で3分の1ずつ相続するようにと書いてあります。

父親が一人暮らしをして、広い自宅、庭や樹木など管理してきました。Мさんと妹は結婚して実家を離れて久しく、すでに家を購入して別のところで暮らしていますので、実家に戻る気はありません。納税資金が足りないので売って3等分にしたいと思っています。

ところが、兄がそれについては反対だというのです。兄自身は同居してこなかったというのに、今になって、実家は残すというのです。

父親は本家の長男でしたから、まわりに親戚が大勢いますし、実家にはお仏壇もあり、これを売るわけにはいかないので、自分が維持していくと言います。

しかも、固定資産税や庭木の手入れなど必要で、年間100万円以上になる見込みです。それでは負担しかありません。

 

◆貸宅地の地代は固定資産税の支払へ

父親は貸宅地の地代収入で生活をしてきました。土地が多く、自宅の土地も広いので、毎年の固定資産税は500万円以上もかかっていました。貸宅地の地代は月額60万円入りますので、固定資産税は払えていますが、残りだけで生活ができない状況です。けれども定年まで勤めたお陰で

年金がもらえていますので、なんとか持ち出しにはならない程度で賄えていたようでした。

遺言書には貸宅地はМさんと妹の2人が、4か所ずつ相続するようにと指定されていました。

Мさんも妹も、貸宅地を維持する気はなく、売却して納税資金にするつもりだということです。

 

◆預金は財産の10%、それだけでは相続税は払えない

父親の預金は約7000万円で財産の10%。預金だけでは相続税は払えません。あとの20%は不動産を売却しての現金を捻出する必要があります。今後の生活を考えると、相続した預金は残して納税資金は不動産から捻出することが妥当かと言えます。

しかし、貸宅地の評価は高く、売却は評価の半分以下でないと売れないと銀行の担当者からは不安なことばかり聞かされているといいます。

 

◆そもそも。銀行は相続、遺言書、不動産の専門家ではない

Мさんの父親は土地持ちの資産家ですので、銀行にとっては優良顧客だと言えます。それだけに相続になったときにも売上につなげようという判断をしたのでしょう。

そのための公正証書遺言だと言えますが、財産の分け方や納税についてはほとんどノープランで、あるものを充てただけに等しく、相続人である子どもたちが困らないようにしたいという発想はなかったと思えます。

けれども、自分のところの報酬に関する記載は明確で、財産の1%を遺言執行料とすると明記されています。700万円以上の報酬になりますが、Мさんは、「遺言書の作成には100万円以上も払っていて、今回は何もしてもらっていないのに700万円以上も払わなければならないのでしょうか?」と困って嘆いておられました。

 

◆父親の生前対策は、どうしておくべきだったか?

もう父親が亡くなってしまったので、間に合わないことではありますが、相続対策の専門会社である夢相続がサポートできたとすると次のような対策をご提案します。

◇節税対策

自宅の土地が広すぎ、ほとんど空き地。よって、自宅は3分の1程度とし、残る3分の2は土地活用して賃貸マンションを建てる。あるいは売却して資産組替し、別の立地に賃貸不動産を購入する。これだけで相続税は半分以下に減らせます。

 

◇納税対策

納税は貸宅地を予定するなら、生前に売却をして資産組替をする。貸宅地の多くが評価以下にしか売れないため、生前の売却が望ましい。相続になった場合でも、申告期限までに売却し、時価申告をすることで相続税はうんと減らせます。

 

◇分割対策

自宅を売却して分ける場合は共有でもいいが、残して維持したい場合は、共有にするのは避けたいところ。生前に残すところ、売却するところを決めて、分筆して単独で保有、処分できる形にしておくことが望ましいと言えます。

 

◆亡くなってしまってからでもできること

◇節税対策

貸宅地の多くが評価以下にしか売れない見込み。その場合は、申告期限までに売却し、時価申告をすることができ、現実的な評価となり、相続税が減額できます。

 

◇納税対策

貸宅地の売却だけでなく、自宅の一部も売却しないと納税できません。自宅の残し方、売却の仕方を効率よく、納付期限までにして売却代金で納税できるようにします。

 

◇分割対策

遺言書では自宅はただ子どもたちが3分の1ずつ相続するとしか記載がなく、それでは土地のすべてが共有になります。共有にしたままだと、意見の相違などが生じると対立したままとなりかねません。残すところ、売却するところを決めて、分筆します。残すところは単独名義とし、売却するところは3分の1のままで売却します。

 

◇遺言執行者を依頼しないこともできる

公正証書遺言があり、遺言執行者が指定されているとしても、合意により、遺言執行を依頼しないこともできます。それには相続人全員の総意であることが必要で、遺言執行者の理解も必要です。

遺言執行者の合意が得られない場合、適任ではないとする理由があれば、家庭裁判所にて遺言執行者の解任手続きを申し立てして審判を下ろしてもらうようにします。

 

◆相続実務士のアドバイス

Мさんのご相談を受けて思うことですが、善良な資産家が相続ビジネスの餌食になっているのではと危惧されるところです。

Мさんお父さんは付き合いのある銀行なので良くしてくれるだろうと思って勧められるまま公正証書遺言を作られたと思うのですが、相続の専門家であればもう少し具体的な内容にして、相続人が困らない、税金の負担も減らし、納税にも困らないようにしておいてあげるべきかと思います。

銀行だから安心とは言えず、相続、遺言書、不動産に慣れた専門家に依頼しないと、Мさんごきょうだいのように何千万円も損することになりかねません。いまからできることをサポートさせて頂き、少しでも不安が解消できたらと取り組みます。

 

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