事例
相続実務士が対応した実例をご紹介!
相続実務士実例Report
骨董品・美術品は相続のとき、どう評価する?税務調査されないために。
■人間国宝の作品 大皿・壷があるМさんの場合
Мさん(60代男性)の父親が亡くなり、相続税の申告が必要になりました。
父親の財産は自宅の他に、賃貸アパート、貸店舗や貸宅地があり、土地、建物で1億8000万円、預金6000万円、有価証券3500万円、アパート建築の借入が5000万円、総資産は2億2500万円と確認できました。
相続人は長男のМさんはじめ、妹2人、弟1人の4人。基礎控除は5400万円、相続税は2620万円となりました。
◇自慢の骨董品がある
父親は知り合いからの紹介で、人間国宝に認定されている陶芸家に会って直に作品を購入しています。1つは直系50cm以上ある大皿、あとの2つは高さ30㎝程度の壷で、作家の直筆サインもあり、箱もあります。
父親は子どもたちにもよく人間国宝の作家さんの話をしており、大皿や壷は家宝だとも言っていました。
Мさんや妹、弟もそうした父親の気持ちを大事にして、代表で長男のМさんが相続するのですが、相続税の申告のときにどうなるのか、気になっていました。
少額のものであれば家財道具一式として個々に評価をしないこともありますが、今回は人間国宝の方の貴重な作品ということで、美術商に査定してもらうようにしました。
◇美術商の査定
美術商には写真による簡易査定を依頼しました。売却する場合は、現物を見てもらっての具体的な金額査定が必要ですが、相続税の申告のための査定であれば、写真での簡易査定でも問題はありません。
美術品買取専門店の査定は、大皿100万円~150万円、花瓶A 5~6万円、花瓶B 3~4万円 となりました。
メールでの査定ですが、金額と査定した会社がわかれば、相続税の申告の資料として添付できると、相続税申告を担当する業務提携先の税理士からOKの判断がでています。相続税の申告には査定の平均値により大皿125万円、花瓶A55000円、花瓶B35000円として申告をするようにしました。
◇記念館に寄付したい
Мさんはいったん自分が相続するということですが、妹、弟たちと話し合い、人間国宝の方の記念館に寄付しようと方針がまとまっています。父親が家宝のように大事にしてきた作品なので、自分たちだけで鑑賞するというよりは、多くの方に見てもらえたらと考えました。
人間国宝として認定されている手陶芸家の方は多くの作品を残して来られたので、関係者が記念館を作り、公益財団法人として認定されています。その記念館に寄付するとなりました。
◇公益財産法人に寄付するなら非課税
公益財団法人への寄付は特例があり、相続税は非課税になります。それには相続税の申告期限までに寄付をし終わり、公益財団法人より、寄付の証明書を発行してもらう必要があります。
詳細は下記の国税庁のページにて説明されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4141.htm
■土地持ち資産家 古書が300点以上あるSさんの場合
Sさん(50代女性)の父親(80代)は複数の土地を所有する土地持ち資産家です。先代からの土地を相続して、守ってきました。父親が10代目という家系です。
父親は自分の土地を生かして、アパート経営をしてきました。また道路拡幅などにより国に土地を買収されたこともあり、一時期、相当な預金があり、さらに毎月、家賃が入ってきますので、お金に困ったことはないと言えます。
父親の趣味は美術商巡りでした。贔屓にしている美術商があり、毎月のように出かけては浮世絵などの和書、洋書を購入していたといいます。父親の楽しみでしたので、家族も黙認していましたが、父親の部屋は古書がぎっしり。
◇古書は美術商で鑑定
父親が亡くなった時、相続税の申告が必要でしたので、財産の評価をするのですが、古書は美術商に鑑定評価をしてもらいました。
鑑定の結果、和本・浮世絵一括 3,373,000円 美術書一括1,501,000円 洋書一式175,000円 計 5,049,000円となりました。
その数、約300点。高いもので「源氏五十四帖」(豊国画)55000円、「近江八景」(広重画)40000円、「虚無僧と美人」(歌麿画)50000円などですが、ほとんどが10000円から20000円ほど。
父親が購入した当時は数千万円したはずと想定されると相続時の市場価値は10分の1以下ということです。
数が少ないようであれば家財道具一式として申告するのですが、300点ほどのまとまった数があることと、預金の引き出しが多く、都度、現金で支払ったと想定されることとの符号として鑑定評価を添付して相続税の申告をしています。
■税務調査をされないような相続税の申告を
骨董品や美術品は「申告漏れ」が多い財産の一つです。高価な花瓶、掛け軸、絵画、刀剣、茶道具など、一般家庭にも残されている可能性があります。
相続人が価値を認識していないケースも多く、後日税務調査で追徴課税されることがあります。税務調査でなぜ、そうした指摘をされるかというと、通帳の引き出し記録から多額の現金引き出しや支払いがある場合等から想定されるということです。
そのため、財産の中に骨董品が残されている場合は、評価の仕方や申告の仕方は税理士や専門家と相談しながら適切な評価と申告をしていくことが大事です。
骨董品には固定資産税の課税は基本ないため、土地や建物のような評価額は存在しません。あくまで時価評価をすることになります。
■【まとめ】骨董品評価のポイント
項目 |
内容 |
評価方法 |
時価(市場売買価格または鑑定評価) |
注意点 |
申告漏れ・価値認識不足に注意 |
推奨対策 |
生前の評価・記録の準備、必要に応じて贈与や売却 |
トラブル回避 |
鑑定書・評価書の保管、専門家への相談 |
・購入価格ではなく、相続時の時価評価となる
・美術商や買取業者に鑑定や査定をしてもらう
・公益財団法人に寄付すると非課税になる
・申告期限までに寄付して証明書を発行してもらう。
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