夢相続コラム

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【相続実例コラム】行方不明・売却:家庭裁判所に申請が必要だった佐藤さん

2020/06/19


【相続実例コラム】行方不明・売却:家庭裁判所に申請が必要だった佐藤さん

●相続関係者

被相続人 次男・異母兄(無職)
相続人2人(長男・異母兄・行方不明者、異母妹・相談者)

●相続事情

佐藤さんの父親は先妻との間に3人の子供を授かりましたが、離婚し、佐藤さんの母親と再婚しました。後妻である母親と父親との子供は佐藤さんだけで、一人っ子として育ちました。異母兄がいることは聞いてはいましたが、当然ながら会ったこともありませんでした。異母兄に会う機会となったのは、父親が亡くなったときの葬儀会場だけで、その後のつきあいがあったわけでもありません。
佐藤さんは50代になりましたが、ずっと結婚をしないで母親と一緒に生活をしていました。母親が亡くなったあとも独身のまま、1人暮らしをしています。そんなときに、異母兄の住んでいたマンションの管理組合から、異母兄が亡くなったという連絡が入ったのです。異母兄は管理組合の理事をするなど、積極的な性格だったようですが、独身を通してきたため、葬儀をする身内は佐藤さんしかいないということです。亡くなった異母兄には実の兄がいますが、行方不明ということ。
佐藤さんにとっては亡くなった人は、父親が同じでも血のつながりはなく、きょうだいという感じではありませんが、他には手続きをする人もいないため、立場上、引き受けざるを得ないというところでした。

●相談者にこられたきっかけ

亡くなった人は築20年以上経った分譲マンションに住んでおり、財産はそのマンション程度で、預金等はほとんどありません。葬儀はなんとか済ませましたが、その後、固定資産税や管理費の請求も全部佐藤さんに届くようになり、どんどん不安になっていきました。
マンションは自分が住むわけでもないのに毎月維持費がかかるとなれば、管理していくのも負担になります。
そこで、処分して今後の供養等の費用に充てたいと考え、相続の手続きについて調べ始めました。行方不明の異母兄は離婚した妻と実子二人があるということなので、行方を確認するために連絡をとりましたが、知らないのはもちろんながらもう関わりたくないという返事。家庭裁判所に申請をすることや財産管理人が必要という説明にも協力は得られず、佐藤さんの母方の伯父になってもらいました。
そこまではなんとか自分で進められたのですが、その先をどうしていいかと困ってしまい、こちらのHPを知り、相談に来られたのでした。
異母兄が亡くなってから既に半年以上が過ぎ、その間、葬儀の費用や毎月の固定資産税、マンションの管理費等の支払いが必要であり、全て佐藤さんが費用を出してきましたが、だんだんと負担になってきており、この先のことを考えるとエレベーターのない古いマンションで、しかも最上階の5階まで歩いて上がるだけでも大変なことで、売れるがどうかもわからず、売れても家財道具の処分代を考えると足りないのではないかと不安だとのことでした。

●運命の分岐点・ここがポイント

☆家庭裁判所は法定割合に固執
法定割合は、行方不明の異母兄が3分の2,佐藤さんが3分の1となりますが、現実には今後の財産処分や諸手続や供養関係も全部、佐藤さんが行わなければなりません。そこで、佐藤さんが財産全部を相続し、行方不明者が現れたときにはいくらかを渡す内容の遺産分割協議書にすることをアドバイスしました。
ところが、家庭裁判所はあくまで原則論で法定割合を分与する内容でないと認めないとする判断をし、指導してきました。そうなると行方不明者の方が多く相続する内容となります。

☆家庭裁判所に上申書
家庭裁判所の指導は原則が法定割合とはいえ、現実の事情からすると、佐藤さんが全部を相続して、今までの費用の立て替え分や今後の供養等に充てる必要があります。そこで、家庭裁判所にそうした理由を書いた上申書を送付し、認めてもらうように事情説明をしたところ、一旦佐藤さんが全財産を相続し、行方不明者が現れた場合は一定の金額を分与する内容で審判が下りたのでした。

☆マンションの売却に着手
家庭裁判所の審判を待ちながらでも、マンションは早く売却のめどをつけた方がいいと判断したので、すぐに売却活動に入りました。幸い、築年数が古くエレベーターのない5階の環境ながら、住環境は悪くないため、不動産会社が購入をしてくれることになりました。

●相続実務士の視点

独身で一人っ子の佐藤さんですので、亡くなった両親の供養は当然ですが、先妻の供養をする人がもうないことから、そちらのことも引き受けていくと言っておられました。行方不明の異母兄の元妻や実子はかかわりたくないし、佐藤さんの父親の先妻である、亡くなった祖母のことも墓守をしようとか供養をしようという気持はないとのこと。
佐藤さんも余計なことと言ってしまえば済むことかもしれませんが、そこを引き受けていくと言われる人柄には頭が下がります。今回の相続手続きがスムーズに進んだことはそうした背景があると思えますし、今後の佐藤さんの人生も穏やかなものだろうと想像できます。

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