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【相続トラブル事例】親の面倒をみなかった兄が権利を主張→裁判へ

2018/06/06


【相続事情】父と姉の面倒をみるため家を建てて同居

 


松永久美さん(50代)は、兄と姉の3人きょうだいです。
結婚してからは実家を離れて生活していました。
両親との同居は考えていませんでしたが、母が亡くなり、父のほうから同居して家事などをしてほしいと要望がありました。
姉は独身でしたが病弱だったため、久美さんが父と姉の面倒をみることにし、夫にも同意をしてもらいました。
そのとき兄からは、「自分は同居できないので、実家で親と同居してほしい」と頼まれたことを覚えています。

 

同居のために実家を建て替えることになり、夫が借り入れをして2世帯住宅を建てることにしました。
土地は父親名義ですが、建物は久美さんの夫名義にする予定でした。
ところが建築中に兄が、「父親の権利も確保したいので1階は父親名義にする。その分の費用も父親に出させる」と言いだしました。
夫は反対しましたが、兄は意見を曲げず、やむなく同意しました。
結果、1階は父親名義、2階と3階は夫名義の2世帯住宅ができあがったのです。
その後、姉は亡くなり、父親と久美さん家族で暮らしてきました。

 

先般、父親が亡くなったので、相続の手続きをすることになりました。
相続人は兄と久美さんの2人です。
兄は父親が入院したとき、父の預金は全部自分が管理すると言って持ち出しました。
父親は遺言を残しませんでした。
久美さんにすれば、実家に同居し、亡姉と父親の面倒をみてきましたので、父親名義の土地と建物の1階は久美さんが相続し、現金は兄に譲ってもいいと考えていました。

 

ところが、兄から出た言葉は「財産は半分ずつに」でした。

 

解決への試み

 

困った久美さんは、相続コーディネーターに相談しました。
父親の遺言書はないので、兄には不動産を相続する権利はあります。
しかし、住んでいるのは久美さん家族ですから、不動産は久美さんが相続し、兄が預貯金を相続するのが現実的と言われました。
不動産評価よりも預貯金が少ないときは、兄に代償金を払うことでバランスをとるようにアドバイスを受けました。

 

久美さんは、夫が所有するマンションを売却して代償金に充ててもいいと覚悟しましたが、兄はとても歩み寄る雰囲気ではありませんでした。
兄にしてみれば、駅に近い土地は価値があるので相続するのは当然という考えのようです。
しかし、久美さんにとって兄は学生時代から実家を離れ、以来ほとんど寄りつきもしなかったため、許しがたい思いです。

 

歩み寄りの接点が見つからないまま、3年が過ぎました。
兄の代理の弁護士から調停の申し立てがありました。
調停、裁判に備え、久美さんも弁護士を立てて対処するつもりです。

 

遺言書があったらどうなっていた?

 

父親の公正証書遺言書があれば、もめごとを防ぐことができるはず。
「同居して面倒をみてくれた久美さんには土地、建物を相続させる」「同居しなかった長男には預貯金を相続させる」と書いた遺言があったら、久美さん家族はそのまま住み続けることができました。
遺言があれば、現金を相続する兄も納得するしかなく、深刻な争いにはならなかったでしょう。

 

遺言作成のポイント
・不動産を共有名義にする場合は、将来のことを考え、慎重に判断する。
・財産の不動産に住んでいる相続人がいる場合には、遺言書で指定しておく。
・不動産を相続させない相続人には預貯金を分与するようにする。

執筆者紹介

【講師】曽根恵子

(株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター相続コーディネート実務士)

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