夢相続コラム

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【相続事例】頼んだ税理士は相続がはじめて?!後悔した武田さん

2020/12/07


【相続事例】頼んだ税理士は相続がはじめて?!後悔した武田さん

●【相続のあらまし】

☆梨栽培の専業農家
武田さんは専業農家で、父親の代からぶどうやなしを作って、地方へ出荷していました。農地は市街化の中にもあり、二カ所のぶどう畑は生産緑地に指定していました。必然と武田家の資産はほとんどが土地であり、評価は約20億円。どこも600坪や800坪といった大きなものばかりでした。生前対策としてアパートを3棟建てており、その負債は財産から引けますが、それでも課税財産は18億円となりました。相続人は、配偶者と子供4人ですが、三女が亡くなっており、代襲相続人が3人、合わせて8人となりました。

☆申告は顧問税理士に頼んだ
武田さんは毎年の確定申告を依頼している税理士事務所に、相続の申告を任せることにしました。アパートを建てた建築会社から紹介された行政書士で、税理士事務所も経営しています。行政書士が所長で、税理士もいるとのこと。 武田さんの場合は、財産が多く自分のところだけでは手に負えないらしく都内の納税コンサルタント会社と一緒に進めると言って来たとのこと。また、税理士を大勢抱えている税理士事務所と提携しているので安心だと説明されたのでした。申告の業務委任契約の他に納税に関する業務委任契約と物納の準備に関する覚書きも締結しました。

☆納税のため畑を売却
相続税は、農地の納税猶予を受けても7億円となり、申告は終わりました。しかし、納税資金を捻出することが難題です。とりあえずは物納申請をしましたが、土地を売るしか方法がなく、市街化の中にある生産緑地の2カ所、約1500坪を売却することにして不動産業者に依頼しました。
畑は2カ所とも長方形の土地で、駅からは距離はあるものの分譲マンション用地に適しています。幸いほどなくしてマンションデベロッパーから購入したいと申込が入り、なんとか希望額で契約することができたのです。そのときに仲介してくれた不動産業者に、「相続税が高いので大変だ」という話をしたところ、申告が終わっても相続税を下げるチャンスはあるかもしれないので相談してみないかと、紹介されて相談に来られたのでした。申告が終わってから3ヶ月過ぎたところでしたから、まだ更正の請求をする期限には半年以上ありました。

【相続のプロが指摘する! ここが問題】

◇税理士とは一度も会わずに契約した
契約の相手先は税理士とコンサルタント会社ですが、武田さんはその両者に会ったこともありません。窓口は行政書士の先生だけで、武田さんが押印した後に両者の印を押したものが届けられたのでした。契約の内容は税理士報酬とは別に、物納した場合は物件の評価額の3%を支払うこと、土地売却がある場合は、仲介もしくは代理として規定の報酬を払うこととなっています。

◇配偶者の特例をほとんど利用しなかった
遺産分割に文句を言う人はなく、姉妹は70坪程度の土地を分けることで了解は得られました。代襲相続人には現金です。残りの財産は武田家に残すためで、武田さんと母親で持ち分を決めればいいのです。全員の相続税は長男である武田さんが負担する約束です。
二次相続が大変と回りから聞いているので、一度で済むならと楽だと行政書士の先生に話はしていましたが、母親へ半分は分けるつもりでした。ところができあがった遺産分割協議書は、母親へは現金だけで残りの大部分は武田さんの取得財産となっていました。
各自の相続税は、武田さんが6億5千万円、姉と妹二人で3500万円、母親は650万円の内、配偶者の税額軽減を受けられたのは430万円、220万円は納税が必要となり、代襲相続人は無税となりました。配偶者は財産の財産の半分までは無税という特例を使えるのに、3億5000万円を多く払うことになってしまったのです。

◇相続税の上、贈与税も課税される分割
相続税は武田さんが全部負担する約束ですから、こういう場合は、姉妹のかわりに払う税額の分を代償債務・代償債権として分割協議に明記しておきます。何の記載もなく、そのまま武田さんが姉妹の分を納税したのでは贈与になってしまうからです。
ところが遺産分割協議書のなかにその記載はありません。行政書士もあとからそのことは気がついたようですが、具体的なアドバイスがないまま、申告は出されていました。

◇土地は共有のまま登記された
姉と妹に分ける土地は大きな土地の一部です。場所も決めてあり、分筆する予定でした。ところが、分筆をする前に共有持ち分のまま登記されていました。これでは、後から共有物分割の登記をしなくてはならず、余計な手間と費用がかかります。

◇実測したのに登記簿の面積で申告
武田さんの土地は大きいものが多く、宅地造成案を作成してありました。実測をした上で、図面を作成して、申告書に添付しているので、申告でも実測の面積を採用するのが普通ですが、登記簿面積で申告書を作成してあります。実測した土地は、登記簿の面積と比べるとそれぞれ少しずつ増えており、3カ所では300坪近く増えています。このままでは、税務署より修正申告を指摘され、追徴金を取られることは目に見えていました。

◇物納申請は形だけの気休め
申告時には物納申請をしてありました。納税額6億5千万円のところ、物納は3カ所で約7億円の土地です。しかし、2カ所には姉と妹が相続する土地の持ち分が共有で含まれています。姉と妹の土地は残さないといけないので、物納で両者の相続税を払うつもりであればその分も相続しなければなりませんが、そうした配慮はなされていませんでした。

◇納税猶予の担保に自宅を申請
農地は特例があり、20年間営農する農地に対しては課税される相続税の納税猶予を受けることができます。武田さんの場合は、調整区域の農地だけで3800万円の納税猶予を受けることができました。そのかわり税額に見合う土地を担保提供し、大蔵省の抵当権がつけられます。納税猶予を受ける農地を担保にしておけばいいことなのですが、なぜか自宅の土地を担保として申請されていました。納税猶予は20年ですから将来自宅を建て替えるときは担保に入っていれば融資が受けられないことにもなりかねません。

◇税理士は相続が始めてだった
申告が終わっていろいろな不審点が出てきたので、武田さんが問いただしたところ、申告を担当した税理士は50歳代の女性ですが、武田家のような財産の多い相続は初めてで、今回相続用のソフトを購入したとのこと。さらに自分だけでは手続きは不安なので、相続に慣れた税理士事務所に報酬を払って確認をしてもらったと聞かされ愕然としたのです。

【相続の結末 現実はこうした】

☆更正の請求が間に合った
更正請求の期限は1年以内とされています。武田さんがこちらに相談に来られたのが、申告後3ヶ月。まだ十分に時間はありました。相続税が下がるのであればぜひお願いしたいということで、更正の請求をしたのです。

☆実測面積で評価をし直す
初期の申告書は、実測図面は添付していながら、登記簿の面積で計算している点がちぐはぐで、調査では必ず指摘されるところです。全体では、約300坪も増えているため、それだけでも1億円以上の財産が増えたことになりますが、あとから指摘されると増えた分は過少申告加算税が課税されますから、まずは実測面積で申告するのが妥当と判断し、更正の請求では実測面積に訂正しました。

☆全部の土地を鑑定評価
土地の評価を下げることが減額につながるので、全部の土地を鑑定評価しました。武田さんの所有地はもともと畑であり、500坪、1000坪と大きな土地が多いので、路線価の評価よりは2億円以上は下がりました。これは増えた面積も含んでいるので、登記簿の面積で考えると4億円近く下がった計算になります。

☆物納は取り下げ
物納申請をしておいた方がいいと言われて申請していましたが、2カ所の土地を売却することで、買い手も決まったので、物納は取り下げました。姉や妹に分ける土地も含んだ物納は意味がなかったのです。

☆兄妹で金銭消費貸借契約
姉や妹の相続税は合わせて3500万円です。遺産分割の話し合いで長男である武田さんが土地を売却して払う約束になっていました。本来は、その額を代償債務・代償債権として、土地を分ける替わりに現金で分けることを遺産分割協議書にも記載しておきます。そのお金で相続税を払うわけですが、その記載がないまま払うと、武田さんから姉や妹に贈与したことになります。それを避けるため、貸し借りとし、金銭消費貸借契約書を作成しました。相続税を払った上に、贈与税まで課税されるところをくい止める対策です。

☆6000万円の相続税還付実現
更正の請求で、1億円程度の相続税が下がりました。土地が増えた分は相続税も増えたのですが、差し引き6000万円程の相続税の還付が実現したのでした。

【ここに注意する! お役立ちアドバイス】

◇配偶者税額軽減の特例は最大限利用した方が納税は減らせる
◇配偶者税額軽減の特例と納税猶予の特例をダブルで利用すれば納税は減らせる
◇代表者が納税資金を調達する場合は、代償金として分割協議に明記する
◇土地の共有は納税のための売却を除き、できるだけ避ける
◇ひとつの土地を分ける場合は分筆をしてから、相続登記をする
◇申告後、一年以内は更正の請求で相続税が取り戻せる

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